店主訪問記

2016年05月31日

塩のり工房「有明の風」東島 香代子さん

塩のり工房「有明の風」東島 香代子さん
有明の風
東島 香代子さん

義父と義母の想いを受け継いで
健康食としての海苔の価値を高めたい

 毎回、家族のような温かさで迎えてくれる「有明の風」の東島一家。7年前の初取材の折、いただいた海苔の美味しさに衝撃を受けて以来、他社の海苔を食べるという選択肢がなくなった程だ。佐賀海苔直販のパイオニアとして迎える9年目、すっかり全国に熱烈リピーターが定着。訪れる度に新たな発見と感動があり、常に進化を続ける「有明の風」さんに今年から新スタッフが加入。東島家に嫁いだ若手ホープ・香代子さんに期待が高まる!



≪東島さんの熱いサクセスストーリーはコチラ≫
★「海苔はおにぎりの包装紙じゃない!」初インタビュー…2009年6月
★夫婦2人3脚―典子さん、夢を語る…2010年10月
★海苔収穫真っ最中に工場突撃!…2012年3月
★店舗大改装!「すべてはガレージから始まる」…2013年7月
★念願叶った海苔御殿で次世代に思いをはせて…2015年3月

Q・香代子さんが海苔の加工職人になろうと決意した理由は?
A・佐賀市内でファッション関係のショップを営む主人の店が、移転拡大したのがきっかけですね。お店の経営は最初も大変ですが、軌道に乗り、固定客がつくと慢心せずに再び新たな道を歩まなければなりません。私は主人と2人で店を切り盛りしながら、実家の直販店舗「有明の風」の成長も見てきました。どちらの店も今、次のステップに移る時期だと感じ、主人の店はスタッフさんに任せて家業に飛び込むことを決めたんです。

Q・ご主人の代わりに4代目を継ぐといっても過言じゃないですね。
A・海苔づくりは伝統業ですが、現在の大きな課題が後継者不足です。私の主人は最初から後を継ぐ気はありませんでしたが、お義父さん(東島吉孝さん)はそんな息子の頑張りを応援してくれています。現在、漁師業はお義父さんがやる気のある若者を育成中ですが、直販店を営むお義母さん(典子さん)の想いを継ぐ人がいないことに気付いたんです。義父と義母の海苔に懸ける想いは身に染みて知っていますので、じゃあ、私が店と加工分野は引き継ごう!と。

Q・頼もしいですね!実際に海苔の加工に携わってみていかがですか?
A・いやいやまだまだですよ。加工は本当に難しいです!お義母さんの職人技に少しでも近づけるよう必死です。昔は休日に海苔の種付け、商品をサービスエリアで販売するなどお手伝いはしていましたが、お手伝いとは全然違いますよね。何が難しいかというと、海苔を見極めること。加工においては天気、温度、湿度等によって、海苔に乗せる塩や油の塩梅が微妙に変わってきます。その日の海苔を目で見て、香って、食べて、その都度判断しなければなりません。この塩梅を間違えると商品の味が安定しませんので、常にアンテナを研ぎ澄ますよう努めています。また機械の操作を覚えるのも大変!今、まさに修業中といったところです。

Q・海苔の見極めに大切なことって何ですか?
A・まず、海苔の美味しさを知ることですね。私は主人と出会うまで、海苔はスーパーで売っている味付け海苔が普通の海苔だと思っていました。最初、お義父さんがつくった焼き海苔を食べた時、口の中でとろける食感を始めて体験し「えっ、これが同じ海苔?」とショックを受けたのを覚えています。結婚してからは毎日食卓に海苔が並び、娘も息子も毎日海苔を食べているので、すっかり美味しい海苔の味を身体が覚えています。商品用に加工する海苔も一番いいクラスの海苔を使っているので、素材の味を活かすための加工はとても繊細な作業なんです。

Q・加工はどのような流れで行うのですか?
A・今の時期はオフシーズンなので週1回、量も少なめの加工ですが、シーズンとなる11月からは2日に1回のペースで行います。「焼き海苔」からスタートし、「塩のり」「めんたい塩のり」と順序があり、大体1日7000枚、多い時で1万枚(※1枚=タテ21cm・ヨコ19cm)加工し、出来立てをその場でパック詰めします。「めんたい塩のり」はめんたいの粒によって機械が一番汚れるので、加工順序を変更することはできません。加工の量においては隣接の店舗で在庫チェックをその都度行っているので、足りない商品はすぐに加工してパックに詰め、店に並べていきます。ですので直接店舗にいらっしゃるお客様の中には、運が良ければ出来立ての商品に出合える方もいるんですよ。

Q・「有明の風」さんが直販を始めて9年目。今までの取材の度に、世に出る前の加工商品をたくさん試食させていただきました!今ではすべてが大ヒット商品になっています。
A・「梅入り初摘み海苔佃煮」など、すべてお義母さんのアイデアと信念と努力のたまものです。あと忍耐!お義母さんの忍耐力には本当に驚きますし、尊敬しています。昔はお義父さんと2人で海に出て漁師業もしていたというので、海苔への愛情がとても強いんですよ。また食べることが大変お好きですね(笑)。お義母さんと接していると、加工だけではなく、次シーズンは実際海に出てみたい!という気持ちが湧いてきています。

Q・海苔にはシーズンがありますが、ここ近年はオフシーズンもお忙しいようですね。
A・初夏から夏にかけてオフシーズンなので、現在、加工部隊は新商品開発を行う時期なんです。でもOEMなど委託加工がこの2年ほどで急増して、一年を通じて忙しくなり、なかなか新商品開発に着手できないんですよ。委託加工については業務用はもちろん、個人の漁師さんが自宅で楽しむ為に、口コミでウワサを聞いて依頼してくるケースも多いんです。生産者によって海苔はそれぞれ特徴があるので、加工時にはやはり見極めと判断力が大きく必要になってきます。

Q・まさに職人の世界!ここ数年、農業や漁業など第一次産業が脚光を浴び、後継者不足と叫ばれる中でも若手の志願者が増えていますね。
A・いわゆる農業・漁業ブームですよね。でも、義父と義母を見ていると、そんな甘い世界ではないということは重々感じています。海苔の生産高全国トップの佐賀県で、直販を始めた義父の覚悟は並大抵のものではありませんでしたし、機械導入など初期投資を思い切って行って、軌道に乗せるまでの試行錯誤もそばで見てきました。そのプロセスを経て現在、パイオニアとして第6次産業としてのビジネスモデルを打ち立てましたが、まだまだ今後の課題はたくさんあります。うちにも漁師や加工をやりたいという若者がたまに訪ねてきますが、よほどの覚悟ややる気がないと難しいと思います。

Q・バブル期、ギフトといえば缶に入った高級海苔でした。そんな光景もなくなって久しいですが、現在「有明の風」さんでは「ギフト商品」が大変人気だそうですね。
A・ネット時代も手伝って、本当に美味しい海苔を探している全国の方から、また海外からも注文がどんどん増えています。他にも、東京や福岡の有名レストランやホテルでもうちの商品を使っていただいています。

Q・直販ならではの良さですよね!どんどん可能性が拡がっていっています。
A・義父はライバルも出てきてほしいと常々言っています。それが佐賀の海苔業界の底上げに繋がればといいという考えなんですね。もちろん生活がかかっているので、収穫した海苔をすべて加工直販しているわけではなく、「有明の風」の商品として販売する分は全体の収穫量の約15%。現在、大量生産を行う生産者の数も少なくありません。海苔は水の中に長時間つけることで伸ばすことができるので大量に出荷できるんです。その代わり旨みや柔らかさ、そして味、栄養分はなくなります。より多くの人に本当の海苔の美味しさを手軽に知ってほしいという想いから直販を始めましたが、私たちだけでは力が足りません。

Q・佐賀海苔の本当の美味しさ、価値をより多くの人に知ってもらうためには香代子さんのような若手に期待がかかってきますね。
A・義父や義母の周りには活動を応援、サポートしてくれる方々がいっぱい集まって来るんですよ。県や市や各自治体ともお付き合いが増え、最近は、子どもの病気について研究するNPO法人の為に、寄附付き商品を販売するなど新しい試みも始めています。自社ホームページも新しくしたばかりですし、一人前の加工職人になること以外にもやることはたくさんあります!

Q・香代子さんもやっぱり熱くてステキですね!今後の夢や想いを聞かせてください。
A・ビタミンやミネラルなど栄養分に溢れた海苔を、健康食品としてPRしていきたいと思っています。その為には成分調査を行って、裏付けデータをとる為に動いていくつもりです。新商品開発はもちろん、メディアにもどんどん露出して海苔の素晴らしさを広くアピールしていきたいですね。その為には、まず体験。やはり、船に乗って海に出ないとですね…結構勇気が要るんですけどね(笑)。


加工場1加工場2
加工場1加工場2
一枚一枚、焼き加減は色味を見て品質チェック。加工職人がどの工程にも携われるよう、加工はローテーションを組んであたっている。



加工場3加工場4
(左)一瞬で焼き上がり、塩や油を乗せることができる機械。温度や湿度により設定を誤ると大量なロスを出してしまうので、機械による加工も慎重に行わねばならない。(右)商品用にタテ21cm・ヨコ19cmの海苔を8つ切りにカット。



加工場5加工場6
(左)加工が終わったら丁寧にパック詰め。商品は隣接の直販店舗、佐賀県内の産直市場や道の駅などに並べられる。(右)東島さん夫妻と(右から2人)とパートさん3名。コチラに香代子さんが加わり、新体制でスタート。


>> 有明の風さんの商品はこちらからご購入いただけます。



同じカテゴリー(佐賀海苔「有明の風」)の記事画像
塩のり工房「有明の風」東島 香代子さん
塩のり工房「有明の風」東島吉孝さん
有明海苔「有明の風」東島吉孝さん
有明海苔「有明の風」東島吉孝さん
有明海苔「有明の風」 東島吉孝さん
同じカテゴリー(佐賀海苔「有明の風」)の記事
 塩のり工房「有明の風」東島 香代子さん (2018-08-31 17:10)
 塩のり工房「有明の風」東島吉孝さん (2017-09-06 17:04)
 有明海苔「有明の風」東島吉孝さん (2015-02-28 17:00)
 有明海苔「有明の風」東島吉孝さん (2013-07-31 17:13)
 有明海苔「有明の風」 東島吉孝さん (2012-03-01 19:58)
 有明の風 東島 典子さん (2010-09-27 13:57)

Posted by さがファンショッピング  at 17:00 │Comments(0)佐賀海苔「有明の風」

※このブログではブログの持ち主が承認した後、コメントが反映される設定です。
上の画像に書かれている文字を入力して下さい
<ご注意>
書き込まれた内容は公開され、ブログの持ち主だけが削除できます。