店主訪問記

2009年03月31日

白玉饅頭 元祖吉野屋 吉村正則さん

白玉饅頭 元祖吉野屋 吉村正則さん
白玉饅頭
元祖吉野屋
吉村 正則さん

伝統と歴史を最新の技術で外へ-
九州の嵐山・川上峡の浪漫を改革。


 「佐賀のお土産といえば、白玉饅頭でしょう」と言う県外ファンも多いのではないだろうか。真っ白でツヤツヤ、まん丸でコロンとしたかわいらしい形、口に放ればもっちもちの皮の中から甘~いあんこの食感が口中にふんわり。
 「白玉饅頭」は生の和菓子だ。ゆえに賞味期限が1日しかもたないため、佐賀に足を運ばないと買えない。そう、ご当地でしか手に入らない稀少なお菓子。伝統と歴史は約120年前に遡り、その存在は400年にも及ぶ。しかし、その白玉饅頭が最新の冷凍技術によって、全国発信が可能になったという。来月から「さがファン」参入予定の、創業明治15年「元祖 吉野屋」へ行ってきた。

Q・お菓子どころ・佐賀ですが、白玉饅頭は日持ちがないため、なかなか外に出ていかなかったですよね。
A・白玉饅頭は佐賀「川上峡」の名物です。大昔は献上菓子であり、約400年前からは町のお祭りやお祝い事用にふるまわれた伝統と歴史ある饅頭なんですよ。形はシンプルで素材もうるち米と小豆と砂糖、そしてほんの少しの塩だけ。でもシンプルがゆえ、手間ひまがかかって作り続けるのがとても難しいんです。私ども吉野屋は創業127年ですが、現在川上峡では、白玉饅頭を作っている店舗は3軒ほどしかありません。現状維持だけで精一杯なところはありましたね。

Q・ホームページやパンフレットなどのPRが素晴らしいですね。
それに伴い、冷凍発信とは!ほぼ改革に近いのでは?

A・ホームページは1年半前に、パンフレットは昨年つくり、そして最新の冷凍技術を使ったインターネット販売・発送は昨年秋から始めました。やはり時代の流れに乗る時が来たのかな、と。でも全国に白玉饅頭の存在を大きくアピールしたい!という気持ちはそこまでなかったんですね。あくまでもここ、川上峡に来てほしいという想いはずっと変わりませんから。冷凍を発案したのは、佐賀を出て全国に住んでいる方の要望からなんです。「ふるさとの味が恋しい」という方々の期待に応えたい、そんな想いから冷凍開発に取り組んだんです。

Q・冷凍饅頭を解凍すれば、買ったその日の味が楽しめるとのこと。
開発までのエピソードを教えてください。

A・とにかく失敗の繰り返しでしたね。最新の冷凍マシンをレンタルし、毎日作っては捨て、作っては捨て。実験に次ぐ実験で、最終的に先代の5代目が食べてOKを出すまで2年かかりました。冷凍饅頭は途中まで普通の饅頭と作り方は一緒です。普通の饅頭は出来たら箱に入れ冷ましますが、冷凍用は熱々の時、急速に冷凍します。個数の分配には気を遣いますよ。

Q・白玉饅頭は生和菓子だから、毎日作る個数の分配が大変でしょう?
A・日々、お客様の来店数が違いますからね。祝日やお祭りがある時期などは、ある程度予測はできるんですが。日常では平均の個数を作り、後は外を眺めながら、お客さんの通りなどを見て作り増しします。1時間で1000個作ることができるんですが、もちろん毎日全部がハケることはないんです。生和菓子ですから、余った分は泣く泣く捨てるはめになるんです。添加物が一切入っていませんからね。
でも、私が六代目になって14年、当初よりも大分個数の分配が読めるようになってきましたね。廃棄数が減ってきました。また白玉饅頭は素材が単純なだけに、仕上がりにごまかしがききません。先々代・四代目はせっかくこねた生地も、気に入らなければ全部捨てていたそうです。

Q・創業明治15年。初代の味と製法をまったく変えずに代々受け継いで127年。
この継続には並々ならぬ努力があったのでは…?

A・マニュアルは一切ないんですよ。とにかく見て覚え、食べて覚え。自分の体で覚えるしかありません。今はベテランのパートさん3人と、私と妻、計5人で切り盛りしています。家族と皆で一つになり、つまみながら作っています。いずれは私の息子が七代目になりますから、まだ6歳ですが息子にも今から教えていきたいと思っています。

Q・ここ「元祖吉野屋」の店舗内にはオシャレなカフェも併設されていて、近くの「イタリアンレストラン吉野屋」にも饅頭が売っていますね。
A・「イタリアンレストラン吉野屋」は1976年に先代・五代目の兄弟がオープンしました。吉野屋は家族経営なので今後は、レストランの方と上手く連携していく予定です。うちのカフェの2Fは座敷になっているので、何かの会合に使ってもらう際に、イタリアン弁当を出したり…。カフェからは美しい川上峡の景色が見えるでしょう?やはりお土産としてだけではなく、「この場所で白玉饅頭を食べてほしい」という想いで作りました。

Q・伝統と歴史を守りつつ、時代の流れに乗っていく…大変だと思うことはありますか?
A・伝統を守るということは大変なことです。お客さんの意見も厳しいですからね。私は六代目ですが、本州の出身で娘婿なんです。なので20年ほど前までは、佐賀、川上峡、そして白玉饅頭の存在すら知らなかったんですよ。だから私が六代目になった当初は相当なプレッシャーでした。
でも、ゼロからのスタート、余計な知識がない分、意見や要望はスーッと入ってきましたし、チャレンジ精神も旺盛でした。歴史と伝統を守りながら、時代の流れに乗っていくという挑戦もできますし。なので、今はとっても楽しいですよ。

Q・立派な自社ホームページで既に冷凍発送を行なっていらっしゃいますが、「さがファン」に参加しようと思われた理由は何ですか?
A・最初は「さがファンブログ」がきっかけでした。好奇心から始めたブログでしたが、意外と反響があったのでそのつながりで「さがファン」本体に参入しようと決めたんです。今まではパソコンなんて…なアナログ人間でしたが、自分から簡単に情報を発信できるブログの可能性にビックリしましたね。
だから、佐賀つながりでまとめて発信できる場「さがファン」には大きな期待をかけています。なんといってもアクセス数が自社ホームページよりもすごいですから。県外の友人に言っても「すごい!」の連発ですよ。新たな可能性や楽しみ、チャレンジがあふれている「さがファン」に、来月お店をオープンする予定ですが、今から楽しみでいっぱいです!

Q・大きな変革をとげようとしている真っ只中ですね!今後の展開予定を。
A・「展開=目標」になるわけですが、土台の信念は「川上峡に来てほしい」この一心です。ホームページ、ブログ、そしてネット販売で、全国に白玉饅頭の存在を知ってもらうことももちろんですが、それを経て「この白玉饅頭のふるさと、川上峡に行ってみよう」とお客様に思ってもらえたら…それが一番の目標ですね。
また、白玉饅頭をベースにした新しい商品も企画中です。何よりも「白玉饅頭=佐賀・川上峡」-この図式をアピールし続けていきたいです!!

外観
創業明治15年。九州の嵐山と呼ばれる川上峡は風光明媚な場であり、初代が商売を始めたころにも、四季折々に多くの人手があった

白玉饅頭
見た目プルプル、食べてモチモチ…秘密は水。
店のそばの井戸水が決め手。時間を置くと表面がカサカサになるので早めに食べよう

きなこ・ごま2点
そのままが一番美味しいが、お好みに合わせきなこやごまも

カフェ外観
3月末になると、大量の鯉のぼりが空を泳ぐ川上峡。佐賀の風物詩のひとつ

カフェ入口
カフェは7年前にオープン。白玉饅頭の他、生和菓子や喫茶を楽しめる

カフェ内観
カフェからは、川上峡の美しい景色を一望できる。
器にも凝っていて、小さな日本庭園もあり浪漫たっぷり。思わず時を忘れそうだ

イタリアン・イタリアンランチ
店から車で5分の「イタリアンレストラン吉野屋」。
ここでも白玉饅頭は購入でき、カジュアルにイタリアンが味わえる   


Posted by さがファンショッピング  at 16:41Comments(0)白玉饅頭の吉野屋