店主訪問記

2016年08月31日

「元祖 徳永飴総本舗」江口 勲さん


元祖 徳永飴総本舗
代表取締役
江口 勲さん
※写真は8代目の江口 輝海さん

自然素材のみを使った伝統菓子「あめがた」
200年以上続いた味を次代に伝えたい

 佐賀の伝統菓子の一つ「あめがた」。もち米、麦芽、水飴のみでつくられる滋味深く優しい味わいの飴だ。佐賀南部、鹿島市の郷土料理・ふなんこぐい(鮒のこぶ巻き)など、古くから料理にも使われてきたあめがたは、臭みのある青魚やうなぎの煮付けにピッタリだという。戦前には60軒ほどあった店も、今は県内で2~3軒。そのうち1軒が、江戸時代後期に創業、200余年の歴史を持つ「元祖 徳永飴総本舗」さんだ。伝統の技術を継承し、次代にどうあめがたの魅力を伝えていくか…9代目となる江口 勲さんに話を伺った。

Q・お父様に話を伺って以来2年ぶりです。勲さんは9代目を担うそうですね。
A・父は伝統の技術・製法を受け継ぎ、頑なに守り続けるまさに"がんこな飴職人"。幼い頃からそんな父の背中を見て育ってきましたが、時代は変わり、あめがたを購入するお客様も高齢化してきました。私は現状のままだとあめがたは消えていってしまうことに危機感を感じ、主に宣伝・販売に力を入れて活動しています。

Q・「さがファン」以外にもネット販売の窓口を広げたのもその一環ですか。
A・はい。「さがファン」の店舗ではやっとクレジットカード決済ができるようになり、よりお買い求めしやすくなりました。直接電話注文される高齢者のお客様が多いのですが、最近ではネットで大量買いをされる方が増えてきました。また、あめがたを人に薦めたいとギフトで贈られる方も増加の傾向にあります。今までのような代引きだけの方法ですと、直接相手に送ることができない為、クレジット決済にしたんです。

Q・若者層にもあめがたの存在は浸透しているのでしょうか?
A・佐賀では祖母、母、そして娘へと代々受け継ぎ、それが自然となっている家庭も多いですが、全国的にはほとんど知られてないのではないでしょうか。でも、あめがたと同じ材料で作る千歳飴なら一般的に知られているので、宣伝する時は千歳飴を引き合いに出すこともあります。また、年に●回ほど東京の伊勢丹など百貨店のイベントに出店しますが、若いバイヤーはあめがたの存在を知らなかったという方がほとんど。若い方の意見を取り入れながら、新しい商品開発にも力を入れて行こうと努力しているところです。

Q・あめがたは砂糖を一切使っておらず、今の健康志向にもピッタリですよね。
A・若い方にその話をすると大体が驚かれます。しかし、七五三で千歳飴を食べた経験はあるから懐かしい、優しい味だとハマっていく方もいらっしゃるんですよ。あめがたは自然素材のみで作っているので、原料が良くないとできません。佐賀は空気も水も美しく、原料のもち米をつくるのに適した土壌なので、あめがた作りに適していたんでしょうね。昔は甘いものがなかなか手に入らなかったので、口承…今でいうクチコミですよね、それでどんどん広まっていったと聞いています。

Q・母乳の出が良くなるという点も大きな宣伝ポイントでは?
A・佐賀県内では「あめがた」=「母乳の出が良くなる食べ物」という認識が高いので、義理の母からお嫁さんにプレゼントすることも多いんです。しかし、実はそこで課題があったんです。大きく平べったいあめがたをもらっても、どうやって食べていいのかわからない、あめがたを楽しんで味わえないというお嫁さん側の意見が多かったんですね。そこで、小さく切って小分けに包装した一口サイズの商品を販売することにしたんです。

Q・普通の飴とは明らかに種類は違うのですが、初めての人はどこで判断していいかわからないかもしれませんね。
A・パッケージもその点に注目して、いろいろと試行錯誤しながら変えていっています。決め手になる言葉に"手練り"とありますが、一部機械を使って練っているので、どこまでが手練りなのか、と卸先に問われることがあるんですよ。場合によっては"手練り"表記を外さなければいけないかもしれません。

Q・どのようにしてあめがたを作るんですか?
A・朝4時半に起床し、その日の気温や湿度を考えながら、釡で水飴を1時間かけて煮立てます。煮立てた水飴は120℃ほどになりますので、作業がしやすい温度になるまで、約2時間かけて冷まします。ですので、作業を始めるのが7時半からになるんですよ。透き通った薄茶色の水飴に空気を含ませて、長く引いていくとどんどん絹のような白い色に変化していきます。そして伸ばして形を整えた後、日本刀でカットしていくんです。この水飴に空気を含ませる段階を機械で行っているのですが、それ以外の作業は全て手作業です。

Q・伝統の製法を守りつつ、より多くのお客様に手軽に味わっていただく為にどのような試みを考えていますか?
A・パッケージを変えたり、新しい自然の原料を使って商品を開発したりするのも一つの案ですが、もっと根本的なところから変化を試みないといけないなと最近考えています。小分け包装の需要の高まりに応じて、カット作業も機械化しても良いと思うのですが、そこは昔ながらの伝統製法を50年以上も守り続けている、8代目の父と相談していかなければなりません。200年以上もつづいたあめがたの味を守る為には大きな変化も必要だと思っています。

Q・新しい自然の素材を使った商品開発も気になります!
A・現在、試しているのが熊本のきんかんやごぼうを使ったあめがたです。あめがたは、原料が命ですので、信頼ある知り合いの農家さんから提供いただいています。抹茶味の「徳永飴」は京都の宇治茶を使っていますが、なぜお茶どころの嬉野茶を使わないのかと良く聞かれるんです。これは何度も試したんですが、嬉野抹茶とは生地が上手くなじまなかったんですよ。そこで、高級ではありますが宇治茶に行き着いたんです。しかし、抹茶をイメージするグリーンが薄いので、今、ほうれん草を使って色づけも試みています。黒糖もいろいろなものを試した上で、今、沖縄の宮古島のものを使っているんですよ。

Q・自然の原料のみを使った飴というところを、もっとPRしていきたいですね。
A・原料については、上質なもち米を提供してくれる農家さんがリタイアするなどいろいろ問題もあるんですよ。その上であめがたを知らない人たちにPRしていくには、今後大きな挑戦が必要になってきます。私たちがつくる「徳永飴」は賞味期限が150日~180日あり、通常の細長いあめがたについてはテーブルの角で叩いて割って食べる、など食べ方についてもパッケージに記載するようにしました。スーパーには飴コーナーではなく、佐賀の特産品コーナーに置いてもらうように提案したり、ギフトセットを作ったり、と今後、あめがたを広める為の課題は盛りだくさん。世代、地域を問わず、さまざまな方にあめがたを楽しんでもらえるよう、これからも頑張ります!

外観
「がんこな飴職人の技」と書かれた暖簾の前に立つ勲さん。佐賀市金立地区にたたずむ工場併設の店舗には昔ながらのなじみ客が足を運び続ける。

千歳飴小分けあめがた
千歳飴を懐かしく思われたあめがた初心者の方には、小分けにしたいろいろな味のあめがたがオススメ。

抹茶もち米飴もち米飴
新しい客層を取り入れている為に、同じ商品でも大きさやパッケージ、価格を変えて販売。食べ比べて食感の違いも楽しんでみてもいかがだろうか。

外観外観
外観外観
早朝から始まり、午前中には作業を終わらせるあめがたづくり。手作業が主で体力勝負だという。秋の七五三シーズンは大忙しだ。

>> 元祖 徳永飴総本舗の商品はこちらからご購入いただけます。

  


Posted by さがファンショッピング  at 17:00Comments(0)徳永飴総本舗

2014年10月01日

元祖 徳永飴総本舗 江口 輝海さん


元祖 徳永飴総本舗
代表取締役
江口 輝海さん

あめがたは商品づくりではなく“作品”づくり
食べ物の原点に帰り、伝統の味を伝えたい。

 「あめがた」とインターネットで検索すると「佐賀」と出てくる。あの千歳飴の…と言われればああ!と膝を打つかもしれないが、もち米、麦芽、水飴のみでつくられるこの滋味深く優しい味は、佐賀伝統の菓子だと知っている人は少ないのではないだろうか。江戸時代後期に創業、200有余年の歴史を持つ「元祖 徳永飴総本舗」さん。伝統の技術を継承して50年超、8代目にあたる江口さんに次代のあめがたへ賭ける思いを伺った。

Q・佐賀伝統の菓子が「さがファン」に新たにオープン、嬉しい限りです。
A・あめがたは砂糖を使わず、もち米、麦芽、水飴でつくるシンプルな飴です。昔から母乳が良く出るようにと産前産後の滋養補給や、病気のお見舞いにも利用されていました。しかし、戦前には60軒ほどあった店も、今は県内で2~3軒。チョコレートやケーキなどのお菓子にとって代わられ、需要の減少とともに技術の伝承ができなくなっていったんですね。時代の流れは変化するものですが、私はこの伝統菓子の魅力を伝え続けたい…そのためには新しいことにもチャレンジしなければなりません。ネット販売は息子に一任していますが、まず、若い人にその存在を知ってもらわないと、と思っています。

Q・佐賀は江戸時代、砂糖が潤沢にとれたことから老舗菓子屋が今でも多くありますが、あめがたは砂糖を一切使っていませんよね。
A・佐賀は空気も水も美しく、原料のもち米をつくるのに適した土壌ですからね。あめがたは自然素材のみでつくっているので、原料が良くないとできません。千歳飴は全国区ですが、あめがたを作っているのは佐賀だけです。以前はもち米から炊いて一から手作りしていましたが、現在は手作り、機械、両方使ってつくっています。

Q・どのようにしてあめがたをつくるんですか?
A・これがなかなかの重労働なんですよ。朝4時半に起床し、その日の気温や湿度を考えながら、釡で水飴を1時間かけて煮立てます。煮立てた水飴は120℃ほどになりますので、作業がしやすい温度になるまで、約2時間かけて冷まします。ですので、作業を始めるのが7時半からになるんですよ。透き通った薄茶色の水飴を空気に触れさせ、長く引いていくとどんどん絹のような白い色に変化していきます。そして伸ばして形を整えた後、日本刀でカットしていくんです。

Q・日本刀!確かに水飴を引いて伸ばしていく作業は力仕事で、かなりのコツが要りそうです。技術の伝承という点はどうお考えですか?
A・この日本刀も代々受け継がれたものなんですよ。私は母方の祖父から受け次ぎましたが、一切つくり方を習っていません。見て覚えるというのが昔の職人の世界ですから。しかし、機械化もありますので今後はちょっと変わってくるかもしれませんね。今まで通りやっていても、変化はありません。そもそも競争のないものは消えて行く世界ですから、私は必死で伝統の味を死守しなければなりません。原料の上質なもち米を提供してくれる農家さんがリタイアしたり、といろいろ問題もあるんですよ。その上であめがたを知らない人たちにPRしていくには大きなチャレンジが必要と考えています。

Q・そもそも、あめがたというと千歳飴のイメージがあって、日常で楽しむイメージがありませんよね。自然素材で体にも良いスイーツなのに…。
A・若い人には全くイメージが沸かないと思うんです。目に触れる機会がないからですね。そこにこそ課題があると思って、全国の百貨店の関係者に相談したり、勉強会に出席したりしました。そこで「食べやすいように小分けにしたら?」というアドバイスを受けたんです。あめがたというと細長い、という固定概念があったので、最初は試行錯誤でしたが、出来上がった一口サイズのあめがたは好評で、それにいろいろな味を加えていきました。今は生姜黒糖、抹茶、唐芋と通常の4種類。黒糖も宮古島のものを使い、抹茶は嬉野、八女といろいろ試しましたが、京都の宇治茶を使っています。

Q・京都の宇治茶ですか!原料もかなりこだわっていらっしゃる!
A・佐賀も茶どころですから本当は地元産を使いたかったんですけど、やはり自分がつくるあめがたにしっくりとマッチするものを探求した結果で、宮古島の黒糖もそうです。通常の3倍ほどする価格の原料を使っているので、周りから心配されたりしますが、私は商品をつくっているんじゃない、作品をつくっていると思っています。本当に頑固な職人なんですよ(笑)。儲けを先に考えたらろくなものはできません。樹木で言えば、根をしっかり張ることで、後から枝が生え、実が成っていく。その実こそが利益で、先に実をもぎってしまったら、すぐに潰れてしまうでしょう。土台そのものが大事なんです。

Q・これからは千歳飴のシーズンですね。全国から受注が相次いでいるのでは?
A・おかげさまで、県内の幼稚園や保育園からはもちろん、県外からも問い合わせがくるようになりました。写真屋さんとタイアップしたり、いろいろ工夫もしています。紅白の細長い棒飴を化粧袋に入れて出荷するのが通常ですが、最近だと化粧袋の絵を園児が描くというパターンもあります。また、園によっては白のみの発注もあったりするんですよ。

Q・千歳飴には何も疑問を抱いていませんでしたが、現在はいろいろ事情があるんですか?
A・それこそ時代の流れかもしれません。千歳飴の化粧袋の裏には神社の鳥居の絵が描かれているでしょう。宗教的な理由から化粧袋は要らないという要望もあります。また紅白飴ですが、紅色の着色料がアレルギーを引き起こすかもしれない、と白のみでいいという要望もあるんです。要望が多様化すると同時に苦情も起こるんですよ。

Q・それは興味深いお話ですね…。江口さんご自身があめがたを通して、若い人、子どもたちに伝えたいことは何ですか?
A・モノが豊富に溢れているこの時代、手軽に食べられるスナック菓子や柔らかいケーキ、砂糖たっぷりのチョコレートなどでスーパーマーケットの棚が埋め尽くされています。固いモノを食べない現代の子どもたちのあごはどんどん細くなり、体自体は大きくなっても栄養が偏ると、すぐに病気になったり、アレルギーを引き起こしたりします。インスタントな食品は一時的には良いのかもしれませんが、先ほど樹木の話をしたように、根をしっかり張って強い土台をつくらないと、体はもたないと思うんです。だからといって、現代社会のお菓子と比較するつもりはありません。ただ、あめがたという自然素材でつくったお菓子もあるんだよ、という事実を伝えたいんです。

Q・現在、時代が逆行し、本当に体に良いものが高くても売れる傾向にありますから、今後を期待しています!
A・いろいろと策を練らないとですね(笑)!まずは露出を増やさないと。私が小学校5年生の時に給食でパンが出てきた時は、最初驚きました。でも食べて行くうちに慣れていくんですね。食べ慣れる、というところが一番ポイントなんだと思います。ですので、その前に存在を知り、美味しいと思ってもらう。そこからがスタートですね!私は来年で75歳になりますが、まだまだやらなきゃいけないことはたくさん。食べ物の原点に帰り、健康管理をしながら頑張ります!

商品商品
佐賀の郷土料理「ふなんこぐい」(鮒のこぶ巻き)にも使われていたあめがた。臭みのある青魚やうなぎの煮付けにピッタリだという。料理の方面からの可能性も広がる。



早朝から始まるあめがたづくり。袋詰めまで手作業で行い、午前中には作業が終わる。これからの七五三シーズンは大忙しだ。

外観
佐賀市金立地区にたたずむ自宅、工場併設の店舗。「がんこな飴職人の技」と書かれた暖簾が光る。

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