店主訪問記

2014年10月01日

元祖 徳永飴総本舗 江口 輝海さん

元祖 徳永飴総本舗 江口 輝海さん
元祖 徳永飴総本舗
代表取締役
江口 輝海さん

あめがたは商品づくりではなく“作品”づくり
食べ物の原点に帰り、伝統の味を伝えたい。

 「あめがた」とインターネットで検索すると「佐賀」と出てくる。あの千歳飴の…と言われればああ!と膝を打つかもしれないが、もち米、麦芽、水飴のみでつくられるこの滋味深く優しい味は、佐賀伝統の菓子だと知っている人は少ないのではないだろうか。江戸時代後期に創業、200有余年の歴史を持つ「元祖 徳永飴総本舗」さん。伝統の技術を継承して50年超、8代目にあたる江口さんに次代のあめがたへ賭ける思いを伺った。

Q・佐賀伝統の菓子が「さがファン」に新たにオープン、嬉しい限りです。
A・あめがたは砂糖を使わず、もち米、麦芽、水飴でつくるシンプルな飴です。昔から母乳が良く出るようにと産前産後の滋養補給や、病気のお見舞いにも利用されていました。しかし、戦前には60軒ほどあった店も、今は県内で2~3軒。チョコレートやケーキなどのお菓子にとって代わられ、需要の減少とともに技術の伝承ができなくなっていったんですね。時代の流れは変化するものですが、私はこの伝統菓子の魅力を伝え続けたい…そのためには新しいことにもチャレンジしなければなりません。ネット販売は息子に一任していますが、まず、若い人にその存在を知ってもらわないと、と思っています。

Q・佐賀は江戸時代、砂糖が潤沢にとれたことから老舗菓子屋が今でも多くありますが、あめがたは砂糖を一切使っていませんよね。
A・佐賀は空気も水も美しく、原料のもち米をつくるのに適した土壌ですからね。あめがたは自然素材のみでつくっているので、原料が良くないとできません。千歳飴は全国区ですが、あめがたを作っているのは佐賀だけです。以前はもち米から炊いて一から手作りしていましたが、現在は手作り、機械、両方使ってつくっています。

Q・どのようにしてあめがたをつくるんですか?
A・これがなかなかの重労働なんですよ。朝4時半に起床し、その日の気温や湿度を考えながら、釡で水飴を1時間かけて煮立てます。煮立てた水飴は120℃ほどになりますので、作業がしやすい温度になるまで、約2時間かけて冷まします。ですので、作業を始めるのが7時半からになるんですよ。透き通った薄茶色の水飴を空気に触れさせ、長く引いていくとどんどん絹のような白い色に変化していきます。そして伸ばして形を整えた後、日本刀でカットしていくんです。

Q・日本刀!確かに水飴を引いて伸ばしていく作業は力仕事で、かなりのコツが要りそうです。技術の伝承という点はどうお考えですか?
A・この日本刀も代々受け継がれたものなんですよ。私は母方の祖父から受け次ぎましたが、一切つくり方を習っていません。見て覚えるというのが昔の職人の世界ですから。しかし、機械化もありますので今後はちょっと変わってくるかもしれませんね。今まで通りやっていても、変化はありません。そもそも競争のないものは消えて行く世界ですから、私は必死で伝統の味を死守しなければなりません。原料の上質なもち米を提供してくれる農家さんがリタイアしたり、といろいろ問題もあるんですよ。その上であめがたを知らない人たちにPRしていくには大きなチャレンジが必要と考えています。

Q・そもそも、あめがたというと千歳飴のイメージがあって、日常で楽しむイメージがありませんよね。自然素材で体にも良いスイーツなのに…。
A・若い人には全くイメージが沸かないと思うんです。目に触れる機会がないからですね。そこにこそ課題があると思って、全国の百貨店の関係者に相談したり、勉強会に出席したりしました。そこで「食べやすいように小分けにしたら?」というアドバイスを受けたんです。あめがたというと細長い、という固定概念があったので、最初は試行錯誤でしたが、出来上がった一口サイズのあめがたは好評で、それにいろいろな味を加えていきました。今は生姜黒糖、抹茶、唐芋と通常の4種類。黒糖も宮古島のものを使い、抹茶は嬉野、八女といろいろ試しましたが、京都の宇治茶を使っています。

Q・京都の宇治茶ですか!原料もかなりこだわっていらっしゃる!
A・佐賀も茶どころですから本当は地元産を使いたかったんですけど、やはり自分がつくるあめがたにしっくりとマッチするものを探求した結果で、宮古島の黒糖もそうです。通常の3倍ほどする価格の原料を使っているので、周りから心配されたりしますが、私は商品をつくっているんじゃない、作品をつくっていると思っています。本当に頑固な職人なんですよ(笑)。儲けを先に考えたらろくなものはできません。樹木で言えば、根をしっかり張ることで、後から枝が生え、実が成っていく。その実こそが利益で、先に実をもぎってしまったら、すぐに潰れてしまうでしょう。土台そのものが大事なんです。

Q・これからは千歳飴のシーズンですね。全国から受注が相次いでいるのでは?
A・おかげさまで、県内の幼稚園や保育園からはもちろん、県外からも問い合わせがくるようになりました。写真屋さんとタイアップしたり、いろいろ工夫もしています。紅白の細長い棒飴を化粧袋に入れて出荷するのが通常ですが、最近だと化粧袋の絵を園児が描くというパターンもあります。また、園によっては白のみの発注もあったりするんですよ。

Q・千歳飴には何も疑問を抱いていませんでしたが、現在はいろいろ事情があるんですか?
A・それこそ時代の流れかもしれません。千歳飴の化粧袋の裏には神社の鳥居の絵が描かれているでしょう。宗教的な理由から化粧袋は要らないという要望もあります。また紅白飴ですが、紅色の着色料がアレルギーを引き起こすかもしれない、と白のみでいいという要望もあるんです。要望が多様化すると同時に苦情も起こるんですよ。

Q・それは興味深いお話ですね…。江口さんご自身があめがたを通して、若い人、子どもたちに伝えたいことは何ですか?
A・モノが豊富に溢れているこの時代、手軽に食べられるスナック菓子や柔らかいケーキ、砂糖たっぷりのチョコレートなどでスーパーマーケットの棚が埋め尽くされています。固いモノを食べない現代の子どもたちのあごはどんどん細くなり、体自体は大きくなっても栄養が偏ると、すぐに病気になったり、アレルギーを引き起こしたりします。インスタントな食品は一時的には良いのかもしれませんが、先ほど樹木の話をしたように、根をしっかり張って強い土台をつくらないと、体はもたないと思うんです。だからといって、現代社会のお菓子と比較するつもりはありません。ただ、あめがたという自然素材でつくったお菓子もあるんだよ、という事実を伝えたいんです。

Q・現在、時代が逆行し、本当に体に良いものが高くても売れる傾向にありますから、今後を期待しています!
A・いろいろと策を練らないとですね(笑)!まずは露出を増やさないと。私が小学校5年生の時に給食でパンが出てきた時は、最初驚きました。でも食べて行くうちに慣れていくんですね。食べ慣れる、というところが一番ポイントなんだと思います。ですので、その前に存在を知り、美味しいと思ってもらう。そこからがスタートですね!私は来年で75歳になりますが、まだまだやらなきゃいけないことはたくさん。食べ物の原点に帰り、健康管理をしながら頑張ります!

商品商品
佐賀の郷土料理「ふなんこぐい」(鮒のこぶ巻き)にも使われていたあめがた。臭みのある青魚やうなぎの煮付けにピッタリだという。料理の方面からの可能性も広がる。

元祖 徳永飴総本舗 江口 輝海さん元祖 徳永飴総本舗 江口 輝海さん
元祖 徳永飴総本舗 江口 輝海さん元祖 徳永飴総本舗 江口 輝海さん
早朝から始まるあめがたづくり。袋詰めまで手作業で行い、午前中には作業が終わる。これからの七五三シーズンは大忙しだ。

外観
佐賀市金立地区にたたずむ自宅、工場併設の店舗。「がんこな飴職人の技」と書かれた暖簾が光る。

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Posted by さがファンショッピング  at 10:00 │Comments(0)徳永飴総本舗

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