店主訪問記

2013年07月31日

有明海苔「有明の風」東島吉孝さん

有明海苔「有明の風」東島吉孝さん
有明の風
東島 吉孝さん

時代と共に海苔の生きる道を探って―
決して変わらない価値観は“美味しさ”

 「さがファン」で唯一の海苔扱い店「有明の風」さん。訪れる度に“海苔業界の今”を語ってくれる東島さん。いつも再会が楽しみなお店で、“追っていく人間”として東島さんほど面白い人はそうそういない。海苔業界では珍しいといわれる直販業を始めて今年で6年目。昨年秋に自社店舗、パッケージを一新、そして満を持して、リクエストの高かった「のり佃煮」を近々に発売! ジャストタイミングで4度目のオジャマと成るに至った。


≪東島さんの熱い思いはコチラから≫
★「海苔はおにぎりの包装紙じゃない!」初インタビュー…2009年6月
★夫婦2人3脚―典子さん、夢を語る…2010年10月
★海苔収穫真っ最中に工場突撃!…2012年3月

Q・前回は真冬、シーズン真っ最中の取材でした。8月は夏休みといった感じですか?
それにしても店の内装が随分変わりましたね!

A・今はちょうどオフシーズンのど真ん中ですね。種付けは通常10月から行いますが、今年は早めに9月には海に入ろうと思っています。去年の10月に店舗を一新したんですよ。それと同時に、商品パッケージもリニューアルしました。いろいろと考えた末、今の時期は販売力アップではなく、効率化だと踏んでいます。ですので、お客様が来店しやすく、商品を買いやすいお店の内装に変え、あと同時にオフィスも大改造しました。


Q・効率化において、店舗やパッケージのリニューアルのほか、大きな決断をされたと聞きましたが…?
A・実は、前は倉庫だった場所に商品を加工するオーダーメイドのコンパクトな機械を導入したんです! 以前は手動で一枚一枚加工していたのですが、これで3倍の速さになりました。以前は1日かけて焼き海苔を3600枚ほど作っていたのですが、機械導入で1万枚も作れるようになったんですよ。


Q・倉庫が工場に早変わり! スゴいですね。後、店舗には奥さまの典子さんの妹さんが加わったとか。
A・アメリカみたいにすべてはガレージから始まる、ですよ(笑)。全部手作りですからね。これからも敷地内がどんどん変化していくかもしれません。妹が来てくれてから、店舗も大分店舗らしくなったというか…以前はどんぶり勘定だったんですよね。ですので、昨年10月の店舗リニューアルやパッケージの変更も経て、随分、会社らしくなったというか…。今までは奥さん一人に任せっきりだったので、とても助かっています。


Q・店舗、オフィス、加工工場と、一貫体制になって随分楽になったのでは?
A・私どものような海苔直販店にはモデルがないから、直販も独学で始め、試行錯誤の繰り返しでした。最初は3~4年加工委託業務が主でしたが、7年目の今、やっと落ち着いたという感じです。効率化に踏み切ったのは、現在の海苔業界の状況もありますが、昨年、奥さんが病気になったんですね。ずっと夫婦二人三脚でやってきたので、今後のことも考え、大きく変化するに至ったんです。


Q・そしてつい最近、新商品「のり佃煮」がデビューしましたね! これは奥さんたっての願いでしたね。以前、インタビューのたびに手作りの佃煮をいただいていましたから。
A・はい。構想数年、商品化まで半年かかりましたね! 佃煮は大量生産ができません。そこでちょうど良い業者さんを武雄に見つけまして、テストを繰り返し、やっと商品化することができました。現在出ているのは、梅入りの「のり佃煮」です。生海苔で作っていますので、新鮮さが美味しさの条件なのですが、商品となるとどうしても防腐剤等添加物を入れなくてはなりません。しかし、武雄の業者さんが梅園を持っていまして、梅を佃煮に入れることで自然な防腐剤と成り得たんです。


Q・それはクオリティー高いですね! 今後梅のほか、ゆずなど展開が期待できそうです。
A・商品開発は奥さんに任せています。「さがファン」でもギフトなどで展開していくつもりです。海苔の佃煮は地元の女性の会がすでに作っていまして、道の駅などに置いているんですよね。ですので、今後の課題はやっぱり「有明の風」というブランドをどう広めていくかになると思います。私たちが作っている海苔の15%が「有明の風」の直販商品になるんですが、最近では大手ブランドの海苔すらも、ブランド名だけでは売れない時代になってきました。


Q・前回、海苔収穫真っ最中のシーズンでのインタビューでは前年の高温多雨が響き、通常の50%しか収穫できない不作だとおっしゃっていました。その後はいかがでしたか?
A・普通、海苔の収穫は3月下旬で終えます。インタビューは2月でしたよね。実はそれから調整して3月末日ギリギリまで収穫を行ったんですが、結局、50%分巻き返すことができたんですよ。なのでプラマイゼロとなりました。昨今では、こういった状況もあり、海苔が不作と言われることはないですね。というのも、海苔業界自体が生産量を安定させる方向性にあるので、平均的に良い海苔ができれば良し、という考えになっています。


Q・しかし生産者は減っていく一方ですよね。何度も聞きましたが…ギフトを席巻し、海苔御殿を建てられた時期に比べると、海苔で生きて行くのも大変な時代になったんですね。
A・確かに生産者は減っていく一方ですが、海苔の生産量は落ちません。それは技術があるからなんですね。安定した海苔の生産を生み出すためには技術でカバーしなければなりません。つまり設備投資です。この設備投資の塩梅を間違えると大変なことになります。
以前はこうだったから…と昔の成功体験にしがみつき、大きな設備投資を行うと元がとれずにかなり厳しい結果を招くことになってしまいますね。


Q・時代に合わせ、生産者は海苔の生きる道を共に探っていかなければならないんですね。
A・海苔の価値観というのはずっと変わらないものです。それは“美味しさ”。以前はブランドの名前だけで価値がグッと上がり、金額も相応のものでした。しかし、今、海苔のブランドを知っているか?と消費者に聞いても知らないはずです。私の想いは一貫して変わりませんが、生きて行くためには、安定した海苔を生産することが一番。それがあってからこそ、「有明の風」を通して消費者の方に直接、本当の美味しい海苔をオススメできるんです。余力の部分にはなりますが、現在では「さがファン」はもちろん、各直売所など、「有明の風」ブランドが購入できる場所がおかげ様で増えてきたのは嬉しい限りです。


Q・佐賀では戦後に海苔漁業が始まり、今は3代目ぐらいになるのでしょうか? 若手の活躍はいかがですか?
A・うちは息子が継がず、別の商売をしておりますが、それはそれで商売人同士、心強いですよ(笑)。周りは私の息子世代が漁に出ていますが、みんな体型がいいんですよ。というのは、昔、海苔バブルの時代は、いかにクオリティーの高い海苔をつくるかに神経を注ぎ、1シーズンに8キロぐらい痩せてたんです! 今は2キロぐらいかな。安定した生産量を第一に行う海苔漁業は以前のように神経は使わないので、今の若手は太っているのかもしれませんね(笑)。でもそれは時代の流れです。私も大分ベテランの域に入ってきましたが、海苔加工機械の借金をきっちり返すまでは、まだまだ止められません!


Q・何に関しても継続が一番ですね。昔は昔、今は今、と。そういえば、東北支援商品も作ったそうですね。
A・はい。宮城県の東松島市、「のり工房矢本」さんの商品を2つ、お店に置いています。きっかけは、同じメーカーの機械を使っていたことで、以前から知り合いだったんですが、震災後、矢本の工場が津波で流れ、心配で船を観に行った生産者もお亡くなりになりました。しかし、矢本のオーナー、津田さんがどうしても海苔漁業を復活させたいということで、震災後の夏、私を訪ねてきたんです。もちろん、到底現地で養殖ができる状況じゃありません。そこで、私どもの海苔を提供しました。それで出来たのが「黒こしょう 塩のり」と「梅塩 塩のり」です。その後、国の支援を受け、前年から養殖を復活させています。「黒こしょう 塩のり」は津田さんのアイデアですが、原料は私どもの有明産海苔。ですので、反対に津田さんの海苔で「めんたい塩のり」を作って販売するなど、お互いコラボレーションしています。


Q・また今回も話が長くなってしまいました。いっつも勉強になります!
A・やっぱり、私が作った海苔を人が食べて、ダイレクトに「美味しい」って言ってもらえるのが一番の喜びですね。ほとんどの海苔はいろんな問屋を通して、どこでどんな名前で売られ、どんな人に食べられているかわかりませんから。秋からシーズンが始まりますが、もし私が現場をリタイアしても大丈夫だな、と思います。人が喜んでくれる「有明の風」のブランドづくりはずっと続きますからね!



有明海苔「有明の風」東島吉孝さん有明海苔「有明の風」東島吉孝さん
干満の激しい有明海のシンボル、月をイメージした新しいパッケージ。前よりも目立つ、カッコいいと評判だ。



有明海苔「有明の風」東島吉孝さん有明海苔「有明の風」東島吉孝さん
典子さんの想いが詰まった「のり佃煮」。梅のかすかな食感と、フレッシュさはやみつき!白ごはんだけじゃなく、そうめんの出汁に加えたり、ゴーヤの和え物に混ぜたり、冷奴にトッピングなど幅広く自由に楽しめる。



有明海苔「有明の風」東島吉孝さん有明海苔「有明の風」東島吉孝さん
有明海苔「有明の風」東島吉孝さん有明海苔「有明の風」東島吉孝さん
より快適に店をリニューアル。試食も可能で話も弾む。典子さんの妹さん(右)が店に入って、よりパワーアップ!



有明海苔「有明の風」東島吉孝さん有明海苔「有明の風」東島吉孝さん
有明海苔「有明の風」東島吉孝さん
倉庫を改造して作った、新・海苔加工工場。その奥のガレージには大きな網が、今秋の種付けを静かに待っている。


>> 有明の風の商品はこちらからご購入いただけます。



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Posted by さがファンショッピング  at 17:13 │Comments(0)佐賀海苔「有明の風」

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