2021年10月01日
「菓子処 村岡屋」 山口 祐司さん
(株)村岡屋
営業部企画推進課 課長
山口 祐司さん
『さが錦』50周年を記念して
『50周年プレミアムさが錦』が登場!
九州銘菓『さが錦』が生まれたのは1971年。肥前鹿島藩大名・鍋島家に伝わる伝統的な織物「佐賀錦」をお菓子として表現、その織物の美しさを世の中に知ってもらいたい、と構想・試作・完成までに10年の歳月を費やした他に類を見ない逸品だ。伝統の和菓子から定番の洋菓子、そして季節の創作菓子まで幅広く、お菓子のある幸せな生活を届けてくれる老舗和菓子屋『村岡屋』さん。昨今登場したばかりの「おやつにしき」は『さが錦』の製造過程で発生する端材を使った新しい付加価値を持ったお菓子として、大きな話題となっている。そして、『さが錦』50周年を記念して10月下旬に登場予定なのが、『50周年プレミアムさが錦』だ。
Q・フードロスの削減の観点から開発した新商品「おやつにしき」が大好評とか?
A・実は昨日(※取材当日は9月21日)、発売したばかりの新商品で、定例の「秋のお彼岸キャンペーン」に合わせました。発売前に、佐賀新聞さんに大きく取り上げられたこともあって、ずっと問い合わせに追われていたんですよ。おかげさまで大反響で、午前中に全24店舗ですべて売り切れてしまいました。
Q・『さが錦』の製造過程で発生する端材を使う、というところが新しいアプローチで、まさに時代にかなっていますね。
A・もともと、『さが錦』の端材はお徳用パックとして販売していたんです。でもそれも見た目が美しいものを詰めていたので、どうしても廃棄せざるを得ない端材が出ていた事実は否めません。それで、ずっと社内でもロス端材を使って何か新しい商品はできないかと、何度も商品開発にチャレンジしていたんです。ちょうど、『さが錦』が生まれて50年。佐賀を代表するお菓子会社として、美味しいだけではなく、社会的価値を生むことに力を注ごうという想いがありました。そこで、国連の持続可能な開発目標「SDGs」の社会的関心が高まっているのもあり、フードロスの削減の観点から「おやつにしき」が生まれたんです。
Q・端材による商品で、あまり数が作れないことから、『さがファン』で販売できないのが残念です。
A・佐賀・福岡・長崎の店舗限定になってしまい、全国のファンのみなさんには申し訳ない限りです。でも今年で創業93年を迎える『村岡屋』の取り組みをぜひ、多くのみなさんに知っていただきたいと思っています。「おやつにしき」はなるべく多くの方に楽しんでいただくよう、『さが錦』と同じカットサイズにし、ビニールと素朴なラベルによる簡易包装にして、原価を抑えています。
Q・1本(7個入り)で300円ですから、『さが錦』の半額以下!見た目もお味も『さが錦』を受け継いだものとなっていますよね。
A・『さが錦』や『さが錦ロール』とはきっちり差別化をしていますよ。こちらはオレンジ風味に仕上がっていて、あずきと抹茶の2種類の味があります。商品化までには1年かかりました。その間、パウダー状にしてチョコを練り混ぜてみたり、オレンジではない、別のフレーバーを入れてみたり、まったく別のお菓子を作ったり、と試行錯誤の連続でしたね。製造、営業、企画部が一丸となり完成させることができて、とてもうれしいです。
Q・『さが錦』のブランドイメージを損なうことなく、フードロス削減に貢献している「おやつにしき」は、『村岡屋』さんの新たな時代へのチャレンジですね。
A・コロナで巣ごもり消費も増加の一方です。また、時代は少量でもいいから美味しいものを、また高付加価値のついたものが求められています。近年では『さが錦ロール』に『村岡屋アイス』も好評で、老舗だけど攻めの姿勢で、そして、昔ながらのリピーター様、新しいお客様に驚き、喜んでいただくお菓子づくりを行ってきました。そこに、フードロス削減という時代や社会への貢献も視野に入ってきたんです。佐賀を代表する老舗和菓子屋として、「つくる責任、つかう責任」も考えていかないと。
Q・すばらしいですね。このコロナ禍で、また今夏も集中大雨で佐賀市内が冠水しました。いろいろご苦労や課題も多いと思います。
A・コロナ禍はどこも苦労されています。私たちも常にアイデアを練っていますが、『さがファン』や自社サイトのオンラインショップの売り上げは伸びていますね。今夏の集中豪雨については、市内の店舗は水でつかりましたが、前回の教訓を生かして現場が行動したので、大きなロスなどはありませんでした。また、定例の「秋のお彼岸キャンペーン」も昨年より良いスタートで、現場も盛り上がっています。
Q・『村岡屋』さんはもともと羊羹屋スタートで、“老舗和菓子屋”と言われることが多いですが、扱う商品は和菓子から洋菓子まで幅広いですよね。
A・そうですね。『村岡屋』といえば『さが錦』のイメージが強いですが、実は羊羹にも根強いファンがついています。私は小城羊羹の最高峰『極上相傳氷糖本練 小城羊羹』が大好きなんですが、多くの方に楽しんでいただくよう、最近サイズやパッケージ、価格を見直し発売し始めました。『さが錦』とギフトセットにしたところ、購入されるお客様も増えています。また第24回全国菓子博で「名誉総裁賞」を受賞した『丸ぼうろ』も『村岡屋』が一番、とおっしゃっていただくリピーター様も多いんですよ。焼き菓子の『徐福さん』やもなか『鍋島さま』など佐賀ならではのネーミングのお菓子もお土産に人気です。
Q・「お彼岸キャンペーン」も大好評とのことですね。佐賀では都心部でも“お彼岸にはお菓子を持って、家族でお墓参りをする“習慣がまだしっかり根付いていますよね。
A・今年は敬老の日効果もありました。そういう昔ながらの習慣がうすれゆく中、佐賀は本当にいいなと思いますね。最近は焼き菓子の『いちごのブラウニー』や『くるみのブラウニー』など洋菓子が若い人にもウケていて、「お彼岸セット」の詰合せにも入れています。季節菓子も楽しみにしてくださるお客様も多く、新商品も常に出しています。
Q・お客様を飽きさせない努力がうかがえます。しかも定番は常にブラッシュアップされていますよね。その最たる商品『50周年プレミアムさが錦』が、10月下旬についにお目見えするとか!
A・はい。楽しみにしていてください!『さがファン』でもぜひ、販売したいと思っています。『50周年プレミアムさが錦』が『さが錦』とどう違うのかは、あまり現時点で詳しく言えないのですが、ワンランク上の原料を使っています。また製法も“焼き”から“蒸し”にして、より生菓子的感覚を楽しめるようになっています。これだけしか情報が出せなくて申し訳ないのですが…食べ比べをぜひ、楽しんでいただきたいですね。
Q・『さが錦』50周年を記念して作られた『50周年プレミアムさが錦』、楽しみですね~!
A・おかげさまで『さが錦』は、発売50周年を迎えました。これを記念して、選りすぐりの素材で特別な『さが錦』を作りました。また、発売当初の製法を再現するために、スチームでしっとりとした浮島生地に仕上げました。こちらは限定ではなく、ずっと継続して販売していきたいと思っています。今回、『おやつにしき』や、『50周年プレミアムさが錦』を開発するにあたって、いろいろな課題が見えてきました。日本って食料の廃棄率がとても高いんですよね。また『村岡屋』のお菓子は、美味しく召し上がっていただきたいため、どの商品も賞味期限が短いんです。賞味期限を長くすれば、ゆっくりと楽しんでいただけますが、やはりほかの食と一緒で、お菓子も新鮮な方が美味しいんですよね。そこで、ジレンマが生じてしまうんです。今後、賞味期限が近付いてきたお菓子について、どう販売していくかも考えていきたいと思っています。コロナ禍はまだ続きますが、甘いお菓子を食べてみなさんにぜひ、元気になっていただきたい。新しいお菓子にワクワクしていただきたい…『50周年プレミアムさが錦』、ぜひ楽しみにしてお待ちください!
佐賀・福岡・長崎の店舗限定、『さが錦』の“端っこ”を集めて作った『おやつにしき』。日常のおやつにピッタリ
大好評だった「秋のお彼岸キャンペーン」。1,500円以上購入すると、『さが錦』、『お抹茶さが錦』を各1個プレゼント!というサービスもうれしい
職人が一つひとつ手作りしている『さが錦ロール』。賞味期限は当日だが、冷凍の場合は1カ月持つ。冷蔵庫で5~6時間かけて解凍した後、24時間以内に楽しんで
さが錦ができるまで
『さが錦』の特徴である、卵・小麦粉・山芋などを加えて蒸した生地「浮島」は均一の厚さにプレスされ、トンネル窯でしっとりと焼き上げる。「浮島」をサンドするバウムクーヘンは一層一層手作業で塗り重ね、10数回に分けて焼いていく
5㎜の厚さにバウムクーヘンをスライスしていくさまはまさに職人芸。帯状のバウムを並べ一枚の板のように仕上げ、チョコレートを塗った「浮島」とピッタリ一体化させる
カットは超音波カッターと手作業、両方で行われる。現在、コロナ禍において工場見学はストップしているが、復活したらぜひ職人技を間近で見てほしい
>>「菓子処 村岡屋」の商品はこちらからご購入いただけます。
取材:森泉敦子
「菓子処 村岡屋」山口 祐司さん
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