店主訪問記

2022年02月07日

「八頭司伝吉本舗」八頭司 勲さん

店主
八頭司伝吉本舗
代表取締役
八頭司 勲さん

どんな時代でも菓子は必要なもの
老舗四代目による新たな価値の創造

 佐賀の小京都と呼ばれ、深い歴史を持つ小城町。いつ訪れても変わらない城下町の魅力をたたえている町だが、この2年は大きな変化を余儀なくされた。1月末、コロナ第6波が押し寄せる中、向かった先は『八頭司伝吉本舗』さん。小城町を盛り上げ、常にチャレンジし続ける四代目にお話を伺うのは4年半ぶり。昨年、満を持して代表取締役に就任した八頭司勲さんに、この時代だからこその老舗の役割、羊羹の魅力、今後の抱負について語っていただいた。

Q・コロナ禍はまだまだ続いていますが、この2年間どんな変化があったんでしょうか。
A・今だからこそ言えますが、やはり前代未聞のことですから、私どもも他の羊羹店も様子見から始まったのではないでしょうか。約20店舗ある小城の羊羹店がすべて同じ考えで動いたわけではなく、しばらくじっとしている店もありましたし、挑戦的に動いた店もあったと思います。とにかく1年目はどこも手探り状態だったと思いますが、いずれにせよ、何か動かないと現状は変わらないわけで、いろいろと知恵をしぼって行動した2年間でした。

Q・コロナ禍でも、「日本一!ようかん祭り」は中止することなく、2年連続で開催されましたね。
A・これもチャレンジではありましたね。年々人気が高まってきているイベントでしたが、世間的には「今回は中止だね」という雰囲気もあったんです。そこで感染予防を徹底し、よりお客様が安心してイベントを楽しめるよう、スタンプラリーを取り入れました。今までは各店の商品を一か所に集めて販売していたんですが、各店舗を周るスタイルにしたんです。観光ボランティアさんの案内で町の散策もできるようになり、1300人ほどの来場者がありました。6回目となった昨年の祭りでは今までで一番多い4000人ほどのお客様に市内外から来ていただきました。

Q・数々のイベントが中止される中、大成功に終わったなんて素晴らしいですね。
A・やっぱりイベント開催については、いろんな意見が出ましたよ。また、すべての羊羹店が参加できたわけではありません。でもイベント開催において、ネットではなく実際に小城の町を歩いて、羊羹を購入されたお客様からは「小城町はもともといい町だけど、あらためてステキな町だと感じた」というご意見も多くいただいたんです。それが嬉しかったですよね。実際、コロナ禍にも関わらず、この2年で古民家を生かしたオシャレなカフェなども増えています。町をPRするイベントも各地で点々と開催していました。その認知があまりされていないのが現状なので、今後は主催者側が連携し、点と点を結んで線にして、もっと町を強くPRしていれればいいなと思っています。

Q・実際、羊羹の売り上げはどうだったのでしょうか。
A・1年目は大きなダメージを受けました。羊羹は日常菓子というより、進物に利用される役割が大きいので、お土産に買っていくというお客様の行動が激減してしまったんですよね。その代わりネット通販の注文は約2倍になりました。でも、全体的に進物の売り上げが下がったので、昨年はその教訓から製造を抑えていたんです。すると昨年末、少しコロナが落ち着いた時期に、例年のように進物の注文が殺到したんですよ。まさに嬉しい悲鳴というところなんですが、なんせ準備をしていなかったので工場がパンク状態になりました。その状態はどこの菓子店でも同じだったらしく、影響はお正月明けまで続いて、製造が追いつかず、品切れしている状態もあったようです。

Q・なかなか動きが読めないものですね。でもお客様のニーズは変わらないということは確かですね。
A・そうですね。それはネット通販の数字に表れていますから。そこで昨年、自社ホームページを一新したんですよ。わざわざ「小城ようかん」と検索して、出てきた画面が20年前の古く、わかりにくいものだったらお客様に申し訳ないなあと。今までただ、受け皿のために「さがファン」を含むネット通販を行っていましたが、今回は本腰を入れてネット通販で商品をPRし、顧客管理をしていかなければいけないな、と痛感しました。ホームページはスタイリッシュで評判もいいんですが、まだ『八頭司伝吉本舗』のイメ―ジ的な要素が強いので、今後は伝吉の核となる羊羹づくりへの想いやこだわり、歴史が紡いで来た物語や製造過程も盛り込み、アップデートしていきたいと思っています。

Q・『昔ひとくち』のパッケージも変わりましたね。よりわかりやすく、かわいらしくなりました。
A・これも昨年の11月に変えたばかりなんですよ。一口羊羹の特徴である「キャンディ包み」を強調したパッケージに一新しました。近年では羊羹が若い客層にも受けてきて、他の羊羹店も一口サイズの羊羹を販売し始めました。うちの『昔ひとくち』の羊羹をみて「見た目がかわいらしい」と買っていかれるお客様も多く、これだけは手間がかかってもやめることはできません。

Q・キャンディ包みは開ける時、ちょっとワクワクするんですよね。お土産にも喜ばれます。昨年はコロナ禍の中、いろいろチャレンジされているんですね。また、真っただ中に代表を交代され、勲さんが名実ともに四代目になられました。大変な時期の事業承継だったと思います。あらためておめでとうございます。
A・そうなんですよ。昨年の7月に代表取締役に無事、就任したんです。あえてコロナ真っただ中の時期に代表を交代したというわけではなく、この数年のびのびになっていたんです。でも厳しい時期に引き継いだことで数々の試練に打ち勝っていく覚悟ができ、上手くいっていると思っています。子どもの頃から先代である、現会長の父の背中を見て「自分が四代目になるんだ」という思いはずっと抱いていましたから、あまりプレッシャーはありません。今後、老舗だからこそのチャレンジはどんどんしていきます。

Q・今目の前に、これから世の中に出るであろう試作品が並んでいます。それもチャレンジのひとつですね。
A・そうですね。コロナ禍の中、何も動けない時にいろいろとリサーチをしたんです。すると最近では、羊羹が素材として注目をあびているということがわかったんですよ。食パンの上にチーズみたいに羊羹を乗せて少し溶かしたり、羊羹でおしるこ作ったり…。ネットで検索したら今まで考えられなかった羊羹の食べ方が出てくるんです。これには驚きましたが、新商品作りには大きなヒントになりました。もちろん、話題性のあるものって一回で消えてしまう可能性が多いんですが、それが入口となり、最終的に『昔ようかん』にたどりついてくれればいいと思うんです。

Q・老舗の羊羹店だからこれをしてはいけない、という決まりはないですよね。話題性を追っていって一回で終わっても、きっちり土台があるわけですから。
A・逆にコロナ禍になったことで、新たな価値観や今までにない発想が世の中でよしとされるようになりました。羊羹業界でも、何か新しい羊羹をつくりたい、という思いは誰しも抱いていたんですよ。でも「羊羹はこうあるべき」という認識が強いので、ほとんどの人が手を出せずにいたのは事実です。だから、こういう時期だからこそ思い切ったことができる。つまり羊羹づくりにおいて可能性は広がっているので、良いことも多いのも事実ですよね。

Q・コーヒー店とコラボした『羊羹に合うコーヒー作りました』も『八頭司伝吉本舗』さんのチャレンジ商品ですけど、こういったコラボ商品も期待できますか?
A・コラボ企画は進んでいますが、味ではなく“食べる時の雰囲気づくり”のコラボです。 それは羊羹にお皿やピックがついている…とかそういう実用的なものではありません。また羊羹の形が変わるとか、パッケージが変わるとかそういう見た目のものでもありません。今考えているのは、羊羹とミニ小説のコラボです。羊羹にまつわる物語を読みながら、羊羹を味わう…なんてどうでしょうか。オシャレな雑貨屋さんにも置けそうですし、新しい食べ方の提案にもなり、若い客層にも取り入れてもらえそうだなと期待しています。

Q・それは面白いですね。ただお茶と一緒に楽しむだけでなく、いろいろ想像しながらの特別なブレイクタイムになりそうです。新しい価値が広がりますね。
A・新商品の企画と同時に、そういった別分野とのコラボも進めていくつもりです。コロナ禍でネット社会がよりスピーディーになったので、“動いている感”は出していかないと、と思っています。でも、時代に迎合してSNS一辺倒になるわけではありません。『八頭司伝吉本舗』の核は『昔ようかん』ですから、ブレない芯を持っているからこそ、いろいろとチャレンジができると思っています。また面白いことに、『昔ひとくち』のような手軽な羊羹が売れる一方で、1kgの木箱入りの大棹羊羹が多く売れる傾向にもあるんですよ。コロナ禍で、お世話になった人に一番高級な羊羹を送りたいと願っていらっしゃる方が多いことにも気づきました。では送られた方はどう受け取るのだろう、と考えた時、生まれたアイデアが1kgパックを2つにわけることです。そうやって時代に合わせ、お客様目線で考えていくことがいかに大事かも、あらためて気づかされました。

Q・コロナ禍でお菓子って大切だなと思いました。八頭司さんにとって羊羹とは、この時代、どういう役割を持つものだと思いますか。
A・羊羹に限らず、お菓子って食事と違って絶対に必要なものじゃないですよね。一息つきたい時にちょっとつまむもの。でも食べるために手をとめるって、手や心を休めることになるんですよね。このスピーディーでストレスの多い世の中、少しでも手や心を休めて、満たされる気分になっていただく、それが出来るのがお菓子、羊羹だと思います。実際、疲れている時には甘いものが美味しいですからね。
コロナ禍で店をたたんだお菓子屋さんもあります。でも先のことはわかりません。今後、違う形でその銘菓が登場する、又は復活する可能性だってあるんですから、銘菓のファンだった方はあきらめてほしくないですね。いつの時代もなくならない、それがお菓子だと私は思います。


八頭司伝吉本舗本店小城町通り
22軒の小城羊羹専門店が軒を連ねる小城町通り、通称・羊羹ストリート。写真は昨年開催された日本一!ようかん祭りの様子。

店内店内
本店内にはギャラリーも併設、地元の幼稚園生からプロまで作品が2カ月入れ替えで展示されてある。取材時には、今年の干支であるトラの置物が店内を彩っていた。

羊羹づくり昔ひとくち羊羹
『昔ようかん』は生餡から練った羊羹を「羊羹舟」に流し込み、一昼夜寝かした後、舟を裏返して羊羹包丁で、寸分の狂いもなく切って行く。まさに職人技だ。

昔ひとくちNEW昔ひとくち
昭和40年代、お花見シーズンに通りを歩くお客様に羊羹を小分けしたのがはじまりと言われる『昔ひとくち』。左写真は以前のパッケージで、右写真は昨年11月リニューアルしたもの。

コーヒー昔ひとくち
以前より販売していた『羊羹に合うコーヒー作りました。』は『ORIGINE COFFEE』さんのアドバイスと、焙煎によってさらなる味わいを追求し、『羊羹に珈琲』にリニューアルした。

トンバイ羊羹昔ようかん(桜)
「トンバイ羊羹」は有田焼のイベント期間にアリタセラ限定で販売される。桜の季節限定で販売している「昔ようかん(桜)」。さくら色の羊羹の中には白小豆で花びらを表現しており、春の訪れを感じさせる。

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Posted by さがファンショッピング  at 17:02 │Comments(0)八頭司伝吉

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