2018年08月01日
「八頭司伝吉本舗」山本 久美子さん
羊羹専門店の誇りを背負って
人気の冷菓が満を持して登場!
今年は明治維新150周年。県をあげて開催中の「肥前さが幕末維新博覧会」には全国各地から人々が訪れている。佐賀鍋島藩36万石、輝かしい佐賀の歴史を彩るのはご存知、お菓子。小城羊羹は、佐賀鍋島藩の支藩として栄華を極めた小城藩、のちの小城町で生まれた。今でも城下町の名残が漂う地域は、佐賀の小京都として市民や観光客に親しまれている。シュガーロードによって菓子文化が花開き、数々の名店が流れゆく時代の中で変化を余儀なくされる中、創業時の精神と技術を守り抜き、羊羹一筋で暖簾を守る、『八頭司伝吉本舗』さん。今回は市内のシンボルロードにある「佐賀唐人店」にお邪魔した。
Q・維新博、盛り上がっていますね。今さっきも外国人観光客がいらっしゃっていました。
A・この頃、県外のお客様のみならず、外国からのお客様も多いんです。今まで、佐賀の特産品といえば佐賀牛をはじめお肉や地酒でしたが、昔ながらのお菓子も再び注目されています。JR佐賀駅から佐賀県庁~佐賀城跡を南北2㎞に渡って結ぶシンボルロード・中央大通りには佐賀銘菓の老舗である村岡屋本店、村岡総本舗唐人町店、北島本店、そして私ども『八頭司伝吉本舗』佐賀唐人店が軒を連ねています。その全4店の銘菓を500円のおトクなクーポンチケットで味わいながら、佐賀の町並みをめぐる「ぶらり佐賀!銘菓めぐりの旅」が好評のようですね。
Q・銘菓というと高価な印象がありますが、気軽にお土産として購入でき、日常的に自分用にも手に入れられる商品が増えたのも嬉しいですね。『昔ひとくち』は画期的です!
A・そうですね。もともとは昭和40年代、お花見シーズンに小城町のメインストリートを歩く人々に、試食として小分けした羊羹を配ったのがスタートでした。当店のお客様はご年配の方が多いのですが、「やはり贈り物としての羊羹といえば、重厚な竿」とこだわる方がいらっしゃる一方、「味は同じだから、あらかじめ切ってある方が贈る方も贈られる方も楽」という方がいらっしゃるなど、ニーズも二極化しています。それぞれのお好みやシチュエーションもありますが、パッケージが違っても中身は一緒。店頭では、お客様のニーズにできるだけ応えられるような接客に心がけています。
Q・佐賀唐人店は小城本店とはまた違った雰囲気ですね。車が飛び交うメインストリートにありながら、時間がゆったり流れ、別世界にいるようです。
A・店の規模は小さいですが、やはりお客様との距離感の近さが現場の魅力ですね。私は『八頭司伝吉本舗』に入社して15年になります。直営店は小城町に本店と工場を兼ねた寺浦店、そして佐賀市内に3店舗-全5店舗ありますが、一つの店舗に常駐するというわけではなく、佐賀市内の店舗を回って小城羊羹の魅力を伝え続けてきました。もちろん店によって、雰囲気も売れ筋も違います。JR佐賀駅構内の「えきマチ1丁目店」はスピード勝負ですので、『昔ひとくち』のような小ぶりの商品がよく出ます。ちょっとした手土産用に、または電車で移動中のおともに、というようなケースが多いですね。こちら「佐賀唐人店」ではゆっくり時間をかけて商品を選び、ギフト用に購入される方がほとんどです。
Q・ここ数年でお菓子も含め、佐賀の特産品が全国区になりつつあります。山本さんは『さがファン』でのネット通販に関わって間もないそうですね。
A・本社ホームぺージでのネット通販を始めた時期も他店舗よりスタートが遅かったと思います。私は最近『さがファン』でのネット通販の担当になったのですが、普段の対面販売と違ってお客様のお顔は見えませんが、メールのやりとりで、よく『八頭司伝吉本舗』という店をご存知だなと感じるとともに、羊羹通の方が多いと思います。私どもでは小城から外に出ても佐賀市内、大きく多店舗展開はしておらず、隣県福岡では、百貨店やスーパーなど限られた店舗で『昔ようかん』を置かせていただいています。よく、福岡からいらしたお客様から「福岡にも出店してよ」というご要望の声をいただくんですよ。
Q・それは福岡に住む私も思います。ほかの羊羹にはない小城羊羹ならではのサクサクした口当たり…『昔ようかん』には最初感動しました。ほかの『八頭司伝吉本舗』さんの商品も気軽にほしいですよ!
A・佐賀で生まれ育った私は、特別お菓子や羊羹が好きというわけではなかったのですが、就職時「小城の『八頭司伝吉本舗』なら」と入社を決めました。歴史の上に成り立つ信頼感は絶大で、前職も接客業でしたがお客様一人ひとりとゆっくり会話しながら、ベストなお菓子を提案していく仕事に惹かれたんです。お菓子は食べたらなくなってしまうものですが、それでも感動したお客様は「また来るね」とおっしゃり、再び店に足を運んでいただく…一番やりがいを感じる時ですね。お店ではお客様に実際にお茶とお菓子を召し上がっていただくのですが、だんだんと表情が柔らかくなり、お菓子を媒介にして会話が広がっていくんです。お客様にとってはくつろぎの、私どもにとってはうれしいひと時ですね。
Q・たかがお菓子、されどお菓子ですよね。つくづく銘菓の持つ力はすごいなと思います。
A・私がここで働きたいと思った理由のひとつに、『八頭司伝吉本舗』の地元主義というか、むやみに手広く展開しない、簡単に言うと安売りしない、という毅然とした姿勢があります。様々な新企画商品がありますが、簡単に商品化しませんし、羊羹と丸ぼうろ、佐賀の昔菓子など、職人の手作業による厳選した商品のみを提供しているんですよね。商品数が少ないので各菓子についての知識も深められ、お客様と直接触れ合う現場の人間として、どのお菓子を購入されるかお悩みになっているお客様に簡潔に特徴を伝えられるよう心がけています。
Q・なかなか手に入らない『八頭司伝吉本舗』のお菓子。8月から『さがファン』でもいよいよ、夏の冷菓が登場し嬉しい限りです!
A・小豆、抹茶の2種からなる『水羊羹』に『梅ゼリー』と『柿ゼリー』は暑い夏にはピッタリ。5つ選んで箱詰めし、ギフトにもできますよ。素材本来の味を生かし、雑味のない上品な甘さがスッと喉を通っていくんです。私の一押しは甘酸っぱい『梅ゼリー』。梅のクエン酸効果で、暑い夏も元気に乗り切れます!『水羊羹』も『ゼリー』もぜひ冷蔵庫で冷やしてお召し上がりくださいね。
Q・バラ売りもしているので、自分用にも楽しめますね。ところで山本さんが一番お好きなお菓子は何ですか?
A・実はもなかの悟竹さんなんです。羊羹じゃなくてすみません(笑)。羊羹ではやはり1本5,000円近くする、竹皮に包まれた昔ながらの大竿羊羹、最極上羊羹伝吉羊羹は本当に美味しいですよ。すべての羊羹が手作りで素材が違うだけなのですが、そうそう食べ比べはできないもの。手軽な『昔ひとくち』をきっかけにやはり、極上本煉など王道の竿羊羹をお客様には召し上がっていただきたいですね。私もギフトにいただきたいものです(笑)。
Q・山本さんにとってお菓子の魅力、小城羊羹の魅力とは何でしょうか?
A・難しい質問ですね(笑)。ただ、私が最近感じているのは、お菓子は自分の品格をちょっと上げてくれるものではないかということなんです。手土産に『八頭司伝吉本舗』のお菓子をほんのちょっと持っていくだけで、そこで笑顔が生まれ、手前みそですが「いい菓子処を知っているな」ときっと相手に感じていただける。ご自身用に購入する際も、忙しい毎日のゆとりを演出する存在にもなりますしね。また小城羊羹の魅力は、やはり小城という町でつくっているというところだと思います。小城羊羹は小城町の精神そのもの。小城の自然や歴史、文化、そして人柄が形となったのが小城羊羹だと思うので、お客様にはできるだけ小城の町で空気感を味わいつつ、羊羹をお楽しみいただけたらと思っています。基本の姿勢は農産物と似ていて地産地消。その魅力を全国のみなさんに『さがファン』でおすそわけし、実際に小城に行ってみたいと思っていただけたら一番嬉しいですね。
色鮮やかな『水羊羹』は小豆、抹茶の2種類。『梅ゼリー』、『柿ゼリー』とともに人気の夏の冷菓で、暑い夏に涼を運んできてくれる。ギフトにもピッタリ
箱入りでギフト対応している『進物用昔ひとくち』に、自分用に、ちょっとした手土産用にピッタリな『昔ひとくち』の詰合せ。お客様の要望で生まれた画期的な逸品だ
佐賀市内を南北に貫くシンボルロード(中央大通り)のほぼ真ん中に位置する「佐賀唐人店」。通りの反対側からは立派な外観を望むことができる
お菓子の王たる風格、羊羹本来の醍醐味が楽しめる「最極上羊羹 伝吉羊羹」は機会があったらぜひ。店内ではお茶とお菓子を味わいながら、ゆっくりお菓子を選ぶことができる
取材:森泉敦子