2017年06月15日
八頭司伝吉本舗 八頭司 勲さん
八頭司伝吉本舗
専務取締役
八頭司 勲さん
進化していく、小城羊羹
進物用『昔ひとくち』が新登場
羊羹王国・小城。その事実を立証したのが、昨年11月、小城市と小城羊羹協同組合がタッグを組み開催した「日本一!ようかん祭り」だ。県内外から人々が押し寄せ、会場の駐車場がパンクする程の大盛況。そのイベントを企画した小城羊羹協同組合青年部会の会長が『八頭司伝吉本舗』の四代目、八頭司勲さんである。昔ながらの手作り製法による『昔ようかん』を伝え、羊羹王国・小城をPRしたい!とさまざまな試みにチャレンジ中の八頭司さん。6月にはお客様のリクエストに応えた、進物用『昔ひとくち』も満を持して登場する。
Q・『昔ひとくち』は手軽に手にとって、家庭でお茶請け菓子として楽しむイメージがあります。新商品が進物用とは意外でした。
A・実は、前からお客様からリクエストが多くあったんですよ。自分の家で楽しむ分はもちろん、お土産にも持って行きたいと。今までの『昔ひとくち』は手軽さを売りにするため、あえて巾着型の簡易包装にしていたので、そういったご要望は新鮮でした。そこでパッケージデザインや包装材を進物用『昔ひとくち』として新たに準備させて頂きました。6月のお中元シーズンには間に合わせますので、期待していてください。
Q・時代の流れに合わせて、『昔ひとくち』をどうPRしていくかが今後の課題ですね。
A・以前から会合や結婚式の披露宴で配るような、3~4つ入れた小さな巾着づくりには対応していたんです。今回、本格的に進物用パッケージづくりにおいては、時代に合わせてどのように形を変えていくかを考えました。当初は中が見えないパッケージでしたが、試行錯誤の結果、中が透けてみえるような和紙風の袋になり、小豆と抹茶を入れたものとなりました。また、簡易包装をご希望される方が増えたことに対応して、箱そのものを活用したデザインになりました。常日頃から、お客様の意見に耳を傾けた商品づくりをこころがけています。
Q・羊羹はお茶と一緒に楽しむことが前提でしたが、昨年の「日本一!ようかん祭り」では「羊羹に合うコーヒー」をプロデュースされましたよね。
A・コーヒーにおいては、羊羹屋ならず和菓子屋なら課題の一つにあがると思うんです。和菓子はお茶、が基本ですが、若者の和菓子離れには、お茶離れも関係しているんですね。そこで、「コーヒーに合う羊羹をつくろう」という動きもあったのですが、伝統の味を守っている私どもとしては逆発想。「羊羹に合うコーヒーをつくろう」と佐賀市内のコーヒー専門店『ORIGINE COFFEE』さんを訪ね、生豆から選んでいきました。こだわりすぎると出口が見えないので、先に3タイプブレンドしてもらい、そこから選ぶという方法をとりましたが、やはりなかなか納得できず…専門店にお願いしてあらためてブレンドしてもらった1品が現在のドリップバッグの商品です。コーヒーの監修は本当に難しかったですね。無難な味は出来上がるんですが、やっぱり羊羹の味を引き立てるものでないと。結果、苦味より酸味が少し強いコーヒーになりました。酸味が強いと、羊羹の甘さの後味を引きずらず、いったん口の中がリセットした感じになるんです。羊羹を進んで味わえるように引き立てる、究極のコーヒーが出来たと自負しています。
Q・それにしても「日本一!ようかん祭り」。予想以上の人出だったそうですね。
A・今まで物産市のような催事はよく行っていましたが、これだけ大々的なお祭りは初めてでした。おかげさまで祭りが盛況に終わったので、今後も小城市の祭りとして続けてほしいという意見も出ているんですよ。それはとても嬉しいことですね。そもそも祭りのタイトルに「日本一!」とつけたのはこれほど多くの羊羹専門店が集い、さまざまな羊羹を作っている地域はほかには見当たらない、と思ったからです。そこで、企画段階で小城羊羹の全銘柄25店舗の羊羹の試食販売を軸に、イベントを展開していくことにしました。また、全国各地の有名な羊羹屋も参加協力して頂いて試食のみ行いましたが、これが大きな反響を呼びました。
Q・確かに、日本一の祭りですね!切り羊羹の実演は八頭司さんがされたんですよね。
A・私が解説を行って、実演は職人が行ったんですが、これも予想以上に盛りあがりました。ちょっとしたショーでしたよ。近くに人があふれたので、会場の『ゆめぷらっと小城』の2階までお客様で埋め尽くされたんです。こんなことは初めてでした。皆さん、実演にご興味があるんですね。そのほか、地元・牛津高校生による、羊羹の新しい食べ方レシピプレゼンテーションも盛り上がりました。私どもとしても、地元の学生との繋がりが欲しかったし、若い感性は刺激になりました。校長先生と「どうせやるのなら、生徒が本気を出せるように」と、卒業後、履歴書に記すことができるよう、小城市長賞まで設けたんですよ。
Q・これから、名物祭りになるのでは?
A・イベントは清水竹灯りの時期に重なっていたので、多くの県外客がいらっしゃいました。しかし、良かったのは、地元・小城の方たちに色々な羊羹屋があったことや日本一であったことを知ってもらったこと。また、小城に新しくできた市民交流プラザ『ゆめぷらっと小城』が会場だったという点もポイントですね。以前は場所がありませんでしたので。街の人が一つの会場に集まることで、交流も進みます。そして羊羹の良さも知っていただけますから、ぜひ次回も続けられるよう、頑張って次の企画を練っていきたいと思います。
Q・そのほか、佐賀県菓子工業組合の青年部で企画して、春の有田陶器市、秋の有田のちゃわん祭り限定の『肥前菓子衛門』という銘菓詰め合わせギフトをつくるなど、精力的に活動されていますね。
A・こちらは今年の陶器市で3回目になります。一社一品を出品して全7社全7種。私どもでは『昔ひとくち』を出しました。これに、有田焼小皿がついて1,350円というお値打ち価格ですので、秋のちゃわん祭りの時はぜひ、有田に足を運んで『肥前菓子衛門』をお土産に購入してください!
Q・お中元シーズンがやってきますね。新しい冷菓も期待していますよ。
A・『水ようかん』は定番ですが、新しい冷菓も企画中です。手作りの羊羹屋としては、形、規格が変わっても羊羹の可能性を追求していきたいですね。すべて手作業だからできることもあると思います!
生餡から練った羊羹を「羊羹舟」に流し込み、一昼夜寝かした後、舟を裏返して羊羹包丁で、寸分の狂いもなく切って行く。まさに職人技だ
バラ売りも行っている新商品の進物用『昔ひとくち』。
昭和40年代、お花見シーズンに通りを歩くお客様に試食として羊羹を小分けしたのがはじまりと言われる『昔ひとくち』。
羊羹協同組合青年部監修の『羊羹に合うコーヒー作りました。』は『八頭司伝吉本舗』や、『ORIGINE COFFEE』の店頭でも販売。酸味と苦味が絶妙にマッチ
色鮮やかな『水羊羹』は小豆、抹茶の2種。梅ゼリー、柿ゼリーともにギフトにもおすすめだ
JR長崎本線小城駅から北へ数百メートルの小城町通りは"羊羹ストリート"。20数軒の「小城羊羹」専門店が並ぶ
本店も昔ながらの雰囲気でなんだか懐かしい感じが漂っている。本店内にはギャラリーも併設。
プロから小学生、幼稚園生まで。作品が1カ月入れ替えで展示
工場では八頭司さん含む4人の羊羹職人が活躍中だ。今では製造の半分以上は「小城の昔ようかん」
店内では落ち着いた雰囲気の中、庭を眺めながらお茶と試食をゆっくり楽しむことができる
取材:森泉敦子