2020年12月07日
「ふるかわ農園」古川 義久さん
レアなイチゴ『桃薫』の季節到来!
朝摘みフレッシュを農園からお届け
冬から春にかけての旬のフルーツといえばイチゴ。『さがファン』では生産者直送の3店舗目となる『ふるかわ農園』さんとも久しぶりのご対面となった。佐賀を代表するイチゴ『さがほのか』に加え、20年の開発期間を経てすっかり佐賀の新しいブランドイチゴとして定着した『いちごさん』、そして佐賀ではもちろん、全国でも希少な存在といわれる品種『桃薫』を家族4人でつくり続けている。小城市芦刈地区の農園を訪ねた。
Q・イチゴのシーズン到来ですね。前回は3月末のラストシーズンにお伺いしましたが、今回は始まりの時期。やはり農園の光景が全然違いますね。
A・農園一面が緑でしょう。まだイチゴが育っていないんです。実は夏の雨の影響で例年より出荷が10日ほど遅れているんです。このシーズンスタート時に10日遅れは結構厳しいんですよ。
Q・10日遅れた分、シーズンが同じく延びるということはないんですか?
A・イチゴの場合それはないんですよ。今、心配なのはクリスマスケーキ用のイチゴの出荷です。12月20日までには、ケーキに合った大きさと形のイチゴに育てないといけません。上手く熟れるように毎日、温度と湿度の管理に格闘しています。私たちは農協にも卸していますが、生産者の顔が見えるイチゴづくり、食べた方の反応を直接見たいという思いから、ここ数年、産地直送に力を入れています。『さがファン』の通販サイトもその一環です。ですので、直取引があるお客様はケーキ屋さんが多いんですよ。
Q・そんな忙しい時にオジャマしてすみません!『ふるかわ農園』さんはイチゴづくりをはじめて約40年。古川さんご自身も後を継がれて13年だそうですが、前回と変化した点はありますか?
A・いえいえ、まだ大丈夫ですよ。これから12月、1月と休みのない日々が待っています!
前回は小城・芦刈地区にはイチゴ農家がかつて60軒あって、後継者不足で20軒に減ったと申し上げましたが、この1年半ほどで17軒ほどに減ってしまいました。でも後継者は若手が育ってきています。私は芦刈地区の生産者14名で構成されるグループに入っているんですが、若手後継者といっても、イチゴ農家では50~60代が主なんです。40代なんて若手中の若手という世界なんですよ。
Q・そんな古川さんはまだ30代で、しかもグループの副会長に就任されたとか?すごいですね!
A・いえいえ、副会長といっても名ばかりです(笑)。役回りなんです。私ももうすぐ40代。グループの中には20代もいますよ。横の連携をとって盛り上げていかないと、ですね。佐賀でイチゴ生産が盛んなのは、唐津や白石地区です。唐津では白いイチゴづくりに取り組んでいる生産者さんもいます。活躍を聞くと、こちらも頑張らないと!と刺激になりますね。
Q・白イチゴですか~。それも珍しいですね。でも珍しいといえば、やっぱり『桃薫』でしょう!
A・「パールホワイト」という奈良生まれのイチゴです。生活のために、ただイチゴをつくって出荷するより、やっぱり生産者として、新しいイチゴづくりにチャレンジして、いろんな方に楽しんでほしいという思いは強いです。そこで北海道や長野、茨城など寒い地方でつくられている『桃薫』づくり。名前の通り、桃のような香りが特徴のイチゴです。
Q・はい、去年いただきました。とにかくハウスに入った瞬間から甘い香りに包まれてビックリ。食べて濃厚でありながら繊細な味わいにビックリ!初体験でした。
A・ココナッツやカラメルのような香りでしょう。芳醇な香りが果実にギュッと閉じ込められていて、柔らかな酸味とジューシーな食感が特徴です。ワインのようだとおっしゃる方もいます。見た目が普通のイチゴですから、ビックリされる方がほとんどですよ。でも残念ながら、『桃薫』づくりは手がかかるので、この1年半で作付面積を縮小したんです。以前はイチゴのハウスは1000坪(3306m2)あったのですが、現在は900坪(2975m2)。ハウスも10棟から9棟に減らしました。また2017年に登録出願された新品種の『恋みのり』の生産をやめて、『いちごさん』の生産に取り組み始めました。今の生産割合は3分の2が『さがほのか』、3分の1が『いちごさん』です。あ、『桃薫』が入っていませんでしたね(笑)。『いちごさん』ハウスが5棟あるんですが、そのうち1棟の半分が『桃薫』エリアです。
Q・なんだかちょっぴりさみしいです!あの衝撃の味を『さがファン』の会員のみなさまやいろんな方々に食べて驚いていただきたいです。
A・大丈夫ですよ!量は少ないですが、『桃薫』は12月末から4月上旬にかけてココでみなさまにご提供いたしますし、佐賀ですと佐賀玉屋、福岡では博多大丸や博多阪急に置いてもらう予定です。扱いはデイリー食としてのイチゴではなく、ギフトになりますが、ぜひ、このレアなデザートイチゴをみなさんに味わってもらいたいです。朝摘みですので、圧倒的に新鮮度が違いますから!
【桃薫についてはコチラ】
https://foodslink.jp/syokuzaihyakka/syun/fruit/Strawberry-Toukun.htm
【佐賀のイチゴについてはコチラ】
https://jasaga.or.jp/agriculture/nousanbutsu/ichigo
Q・そうなんですね。作付面積を縮小したからといって、生産量に影響はあるんですか?
A・どの農産物にも言えることですが、やはり品質管理や収穫タイミング、それに販売ルートなどすべてを総合して考えないといけないんですね。新しく手掛けている『いちごさん』は量がとれるというメリットもあります。でもその分病気も多いなど、とにかくイチゴづくりは、天候を見ながらの各イチゴに合った温度、湿度などの管理にかかってきているんです。
Q・イチゴのほかにも米、麦、大豆なども作られていますよね。その中でも1年がかりのイチゴ生産が一番大変なんですね。
A・そうですね。イチゴづくりは休むひまがひと時もないんですよ。米でしたら、6月に田植えして、水を入れて、10月に収穫するという流れで、麦との二毛作が行えますが、イチゴの場合は1年どころか「イチゴ栽培13カ月」と言われるぐらい。今は収穫始めの時期ですが、同時に来年の株づくりを行っているんです。ここ農園にあるイチゴが親株になります。ココから伸びた太くて長いランナーと呼ばれるツルを切って、別の場所に用意している子苗用のポットに差し、栄養分を入れていきます。冬の間は寒いので子苗は冬眠状態に入りながら育っていくんです。そして春になると目覚めて新芽が出てくるというわけです。冬の間は放っといていいのですが、春からは水をどんどんまいて苗を育て定植させていきます。その間にはいろいろな過程があるのですが、育った子苗を9月頃、畑に植え付けます。つまり、その子苗が来年の親株になるんです。
Q・そしてその親株からまたランナーを取り出して、次の年のための子苗に差していく…と?
A・そうです。親株が子苗を育て、その子苗が親株になり…と苗づくりは半永久的なんですよ。大事なのは、子苗に栄養分を与えるランナー選びです。やはり親子の特徴は遺伝するので、病気のランナーを選んだら、子苗は病気になりやすくなりますし、その子苗が親株になって、そこからランナーをとったら、やはり病弱の苗になります。
Q・へ~!それは面白い…というか大変ですね。その見極めや管理が生産者さんにかかっているんですね。
A・そうなんです。収穫は毎日で中2日のローテーションでイチゴが熟れて収穫にベストな日を見極めながら、その間手入れをしていきます。ですので、これからの時期は早い時間だと朝3~4時起きで収穫を行い、1日700~800個のパック詰めを行います。それ以外の時間は何をしているかというと、すべて手入れにあてているんです。そして夜遅くまたパック詰め作業を行います。
【イチゴづくりの1年はコチラから ※JAさがサイトではありません】
https://www.ja-munakata.or.jp/dt_until_stro.html
Q・美味しいイチゴづくりには、相当な手間と時間がかかっているのですね。しかし、朝3~4時起きで収穫、夜遅くまでパック詰めとは…本当に休むひまがありませんね。
A・お正月なんてあったものじゃないですよ(笑)。朝収穫するのは、やはり寒い時に摘んだ方が新鮮なのはもちろん、実が締まって美味しいからなんです。朝摘みのイチゴは冷蔵庫に一晩寝かせて、翌朝出荷します。この時期はそれの繰り返しです。あ、ちょうど今朝収穫した『さがほのか』がありますから、食べてみられませんか?
Q・わ~貴重ですね。今年初のイチゴです!しかも出荷前の…(スタッフ一同ガブリ)、これは甘い、美味しい!
A・冷蔵庫は8℃ぐらいに設定していますので、そこまで冷たくありませんが、やはり冷やしていた方が美味しいでしょう?イチゴ狩りなどでは常温でその場でいただきますが、イチゴは冷やして食べる方が断然美味しいんですよ。
Q・本当に生産者さんあっての、私たち消費者ですよね。出荷するイチゴづくりだけでもこんなに手間ひまかかるのに、『桃薫』などの新しいレアイチゴづくりにも挑戦するなんて、もう尊敬のひとことです!
A・いえいえ。イチゴづくりは大変ですけど楽しいですよ。『ふるかわ農園』は4人でやっているので、自由に挑戦できるところもあります。子どもの頃から手伝ってきて、両親に学んで、今は子どもたちも手伝ってくれるんです。家族一丸となって、おいしいイチゴ、珍しいイチゴをより多くのみなさんにお届けし、喜んでいただけるよう、頑張りますので、ぜひ、『ふるかわ農園』のイチゴたちをお試しください。『桃薫』は1月上旬~中旬あたりからの販売になりますので、それまでもう少しお待ちくださいね!
【SNSで愛おしいイチゴの生育状態をチェックを!】
■ふるかわ農園 Instagram
■ふるかわ農園 Facebook
佐賀では珍しく、『桃薫』をつくっている『ふるかわ農園』。毎日収穫する。ベストタイミングは果実が真っ赤に染まった後、熟すと色が少し抜ける時期だ。一番味が乗って、芳醇な香りが果実全体から発している。12月末~4月上旬までがシーズンだ
(上左)親株から伸びた栄養分たっぷりのランナー(つる)。(上右)別の場所で待機している子苗用ポットにランナーを差し、来年の準備を行う
(下左)年末現在、子苗は冬眠しながら育ち中(下右)春、子苗の葉が赤くなると眠りから目覚めたサイン
イチゴの葉っぱはどんな品種でも3枚。元気な葉っぱ(左)はバランス良く大きく開いているが、病弱な葉っぱは小さいものや、丸まっている(右)
(上段)熟れるのを待つ『いちごさん』。用途に応じて大きさや形も管理する。これから2日ぐらいで赤く染まっていくのだそう。
(下段)朝摘みの『さがほのか』。大きくて、甘くて、おいしい!
昔から農業が盛んだった小城市芦刈地区。農業の後継者不足があちこちで叫ばれる中、古川さんはじめ、若手農家が活発に行動しているエリアだ。観光農園などは行っていないが、ぜひ、今後若きイチゴ農家たちの挑戦を『さがファン』でも応援していきたい
>> 「ふるかわ農園」の商品はこちらからご購入いただけます。
取材:森泉敦子