店主訪問記

2017年04月29日

おいしいカレーのお店「白山文雅」上野 茂和さん

白山文雅 上野 茂和さん
白山文雅
オーナーシェフ
上野 茂和さん

甘み、うまみ、深みで締める
さらなる欧風カレーの高みを目指して。

 来年60周年を迎える『白山文雅』。地元・佐賀の人々に愛され、全国からカレーファンが集い、一流料理人からの支持も厚い"欧風カレーの聖地"だ。名実ともに3代目オーナーシェフとなった上野茂和さんも、来年独立10年目という節目を迎えるにあたり、新たなチャレンジの道を歩み出した。昨年夏には客からリクエストの多かった缶詰を製造・販売、今年春には三瀬に姉妹店をオープン。あくまでも守りに入らず、カレー求道者としてさらなる高みを目指す上野さんに、3年半ぶりに熱い思いを伺った。


 ≪上野さんヒストリーはコチラ≫
★「記憶に残る味を追求して半世紀―」…2011年6月
★「美味しさを突き抜けて、感動の味へ―」…2013年10月

Q・上野さんが全面監修した缶詰『先人が愛したビーフカレー』、好評なようですね。
A・真空パックの商品は新鮮ですが、賞味期限も製造日から14日間、クール便で送付など結構制約があるんですよね。店舗でも販売しているんですが、遠方から来られたお客様がお土産で持ち帰れないということも多いんです。以前から常温で保存期間が1年間と長期間の缶詰へのリクエストが多かったので、昨年、まず『白山文雅』の顔ともいえる『伝統のビーフカレー』を缶詰にしました。

Q・真空パックのカレーは上野さんが作られるわけですが、缶詰の製造は工場へ委託しているんですよね。
A・そう、それが大変でしてね(笑)。以前のインタビューでも「文雅のカレーは味付けが勝負」と話しましたけど、これがなかなか上手く実現できなくて。味付けとは甘さと辛さと塩味のバランスをとることなんですが、「どのタイミングでこの調味料を…」と常に判断力が要求されます。私も先代のもとで修業10年、独立が認められ厨房を預かって今年で9年目。それでも、絶対に先代の味付けは超えられないですからね。商品化まで時間はかかりましたが、絶対味に妥協したくなかったので、原価を気にせず作り上げました。実は1缶1,080円という価格もギリギリなんですよ。

Q・それが今、『さがファン』にて限定特価で販売中ですよ~!みなさんチャンスです!…っと、商品化までのエピソードを教えてください。
A・まず工場の担当者にレシピを渡したんです。それなりの味になったんですが、味にキレがなかったんですよ。『白山文雅』のカレーはその独特の味付けによって「まず甘味が先に口の中に広がり、辛さがやってきてうまみとなり、最後は塩味で引き締められる」。それが味の"深み"となるんですよね。深みのある味は、最後にキレ上がらないといけない。日本酒を想像していただけるとわかると思います。"深みのない=最後にキレ上がらない"カレーは、おとなしく、記憶に残らない味。人々の記憶に残る、美味しい味を刻まないと、代金はいただけません。そこで、私が工場の研究室に出向き、味付けを自ら行いました。白衣を着て、何だか研究者になった気分でしたよ(笑)。味付けのタイミングを工場の方に直接指導して、調味料の量をデータ数値化しました。料理は化学的側面がありますからね。それで納得のできる、安定の味ができました。最後に先代に味を見てもらいOKが出たので、満を持して販売にいたったんです。

Q・昨年、福岡の岩田屋で試食販売したら、生産が追い付かない状態になったとか?
A・北九州、佐賀、長崎の食品を集めた催事に参加したんです。缶詰をお披露目するためでしたが、真空パックの商品も販売しました。試食販売だったんですが、想像以上に売れたんですよ。催事中は毎朝、佐賀・白山でカレーを仕込んで、国道263号線を通って車で福岡・天神まで通ったんですが、途中で生産が追い付かなくなり、1日に何度も往復したことも。終わりがけにはどんぐり村あたりで車を停めて仮眠していました(笑)。

Q・『白山文雅』の味が、カレーファンでなくとも一般の方々に広まっていきますね!
A・夏のカレーフェアという催事にも参加する予定です。地元佐賀やカレーファンの間で知られていても、隣県・福岡での知名度はまだまだ。催事参加は良い経験ですね。缶詰はギフトにも最適なので、『白山文雅』というブランドを多くの方々に知っていただくには、とてもいいツールだと思っています。今後の缶詰展開は『特製ハヤシライス』が控えていますので、期待していてください。

Q・前回のインタビューで、「文雅のブランドを保った自分の店をつくる」という言葉が出ていました。今年3月、三瀬に姉妹店『白山舎』がついにオープンしましたね!
A・当時は白山の店でそれを実現していたんです。おかげさまで連日満員、お客様の数も数年前に比べ1.5倍に増えました。従業員の数も増えましたし、経営者としてさまざまな試みもしました。料理人としてはひたすら先代を目指し、味を追求してきましたが、この数年、日々の多忙さに追われるばかり。自分の中で『白山文雅』の名前と、先代の味を残さないといけない、と常にプレッシャーを感じて今までやってきました。でもそれがちょっと義務のようになってきたことに気付いたんですね。すっかりカレーが大好きで素人で飛び込んだ、修業時代の気持ちを忘れていました。それでふと、「ただのカレー好きで、夢を追い求めていた20代の頃に戻りたい!」という気持ちが膨らんできてですね…。

Q・それで三瀬に『白山舎』を!思い切りましたね。
A・修業含め約20年、今45歳ですが、50になる前に男として、一からチャレンジしたい!という思いが強くなったんです。先代には「このまま、安定してお客様に料理を提供し、守りを固めておけば、お前の将来も安泰だぞ。あえてリスクを負う必要はないんじゃないか?」と言われましたが、私自身は常に新しいことに挑戦したいタイプ。足るを知らない性格なんですよ(笑)。だって、カレー作りには終わりがありませんから。現在本店と『白山舎』、どちらのカレーも私が作っていますが、本店は店長に任せ、私はほぼ『白山舎』にこもっています。理想の厨房を作ったんですが、そこで日々、営業終了後に新メニューの開発など、研究にいそしんでいます。もうこれが楽しくて、楽しくて、ですね(笑)。

Q・三瀬には、週末限定の人気カレー店もありますよね。そば街道じゃなく、カレー街道になるかも!?
A・目指したいですねえ!私、前々回のインタビューで、「カレーには3種類ある。欧風カレー、インドカレー、おふくろカレー」って話したんですけど、この数年、「その他」に当てはまるカレーがどんどん増えていますよね。カレー好きって食べる方もマニアが多いし、 作る方は変な人が多いんですよ(笑)。我流でカレー道を究める人が多い中、あえて正統派の欧風カレーシェフが、「三瀬をカレーの聖地にしよう」と手を挙げるのって面白くないですか?『白山舎』をカレー基地にして、さまざまなカレージャンルの猛者たちを集めて、ともに研究したり、イベントを開催したり…夢は膨らみますねえ(笑)!

Q・きっと上野さんならすぐ実現させそうで、ワクワクしますね。今後の展開を教えてください。
A・さらなる高みを追求することですよね。欧風カレーの『白山文雅』ですが、『フルーツカレー』『森のきのこのカレー』『7種の豆カレー』、『タイのグリーンカレー』など、さまざまなカレーがあります。でもそれは『白山文雅』のフィルターを通してつくったもの。だからすべてが"甘み、うまみ、深みで締める"という統一感のある味になっています。カレーは一口目のインパクトが大事。一皿勝負なんです。驚きと感動が得られないと、次はありません。来店されるお客様の舌は正直で、味付けが少し違っただけで、お土産用の真空パックの売れ行きが違うんですよ。カレーという境界があいまいな自由な料理を、フランス料理のようにワンランク存在を上げることは出来たと思っています。今後は、『白山文雅』のカレーをベースに、カレー人として成仏できるまで(笑)、カレーが持つあらゆる可能性にチャレンジしていきます!



外観1外観2
佐賀市の中心地、白山に創業当時の60年前からたたずむ『白山文雅』。雑誌に「カレーの聖地」と書かれ、日々ファンや美食家たちが集う

店内1店内2
"昭和の高級店"の名残をとどめた雰囲気のある店内。予約制で夜のフレンチコースも好評だ。接待にもよく使われるという

色紙1色紙2
和、洋、中華…一流の料理人たち、多くの芸能人が伝説のカレーを味わいによく訪れる。中には上野さんにカレーの作り方の教えを乞う有名料理人も

カレー缶詰1カレー缶詰2
店内でも真空パックの商品、そして今回新たに発売となった缶詰『先人が愛したビーフカレー』が発売中

白山舎1白山舎2
白山舎3白山舎4
福岡と佐賀を繋ぐ国道263号線。三瀬トンネルを福岡側から抜けてすぐ、山のふもとに新しくオープンした姉妹店『白山舎』。大自然の中、非日常の空間と時間を体験できる。"山のごはん"をテーマにバターライスに古代米を使うなど、本店との違いも楽しめる

>> 白山文雅の商品はこちらからご購入いただけます。

取材:森泉敦子




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Posted by さがファンショッピング  at 17:00 │Comments(0)白山文雅

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