店主訪問記

2007年10月31日

株式会社 竹八 代表取締役 竹下八十さん

珍味であり、漬け物―粕漬けといえば「竹八漬」!
佐賀の"おみやげ"として定着させていきたい。

 北の玄界灘、南の有明海―。性格のまったく異なる2つの海にいだかれた佐賀。日本最大の干拓地、有明海はいつも穏やかな波をたたえ、秋にはノリ漁業のためのノリヒビとよばれる竹の棒がズラリと並ぶ。その風景は年を越して春まで見られる風物詩となっている。
豊穣の海と呼ばれる有明海の干満の差は最大約6m。稀少な泥のじゅうたんの中には、ムツゴロウを代表にさまざまな変わった生き物が生息し、昔は普通の家庭の食卓に有明海の幸が並んできた。現在こそ水揚げ量は減少したが、その味はしっかり守られ今でも生きている。創業75年、一人の男が作り上げた「竹八漬」。川副町の本社でお話を伺った。

Q・珍味の王様、たいらぎの貝柱を銘酒粕漬けにした「竹八漬」。歴史を教えてください。
A・私の祖父である、竹下八郎が17歳の時に作り上げた有明海珍味の漬物です。彼は昭和7年当時、個人商店を営む兄を手伝っていて、14.5歳のころからこの地・川副町で天秤棒を肩にかけて、朝、海産物を仕入れ、夕方、町に売りに出かけるという行商人をやっていたんですね。その頃は現在と違って海産物の水揚げ量も多量で、そしてもう一つ、今では焼酎が主流ですが、元々佐賀は米どころですので、日本酒が多かったんです。そこから出る酒粕も多量。あまったものは捨てざるを得ないという状況でした。そこで、彼は「どうせ余った海産物と酒粕を捨てるなら…」と海産物を粕漬けにすることを思いついたんです。

Q・海産物の漬け物、って珍しいですよね。漬け物といえば野菜等が多いのですが…。
A・漬け物っていろいろ種類がありますが、大体が塩漬けですよね。だけど当時は塩漬けだと保存できなかったんです。酒粕は発酵食品だったので保存食にもなりました。また酒粕は熟成すると旨みがジワジワと出てきて、元々塩っけがある海産物にマッチするんですよ。現在でも、海産物を漬け物にしているのはここと福岡・柳川ぐらいじゃないでしょうかね。"漬け物でもあり、珍味でもある"というところが大きな特徴です。

Q・創業75年、最初のころと味の違いはありますか?どのように作っているんですか?
A・製法は基本的に当時と変わっていません。「竹八漬」として売り出したのは昭和40年のころで、それ以前は「貝柱漬」として売っていました。戦争時は、祖母がコツコツ作り続けていたようです。現在は職人一人と助手、身内で作っています。一番重要なのは、酒粕の配合具合。これは見て覚える、という感覚しか頼るものはありませんね。だから、今は職人一人が伝統の味を守っていますが、ちょっとした配合の違いで味が変わったりします。また、酒粕は発酵して日々、生きていますから1日1日味は変わっていくんですよ。

Q・漬け物ができあがるまでどれくらい時間をかけるんですか?
A・季節によっても違います。まず酒粕を熟成させるんですが、冬場は約3ヶ月、夏場は温度の都合で約1ヶ月。それから冷蔵庫に保存し約2~3ヶ月おきます。冬場と夏場のものを同じ味にするためには、酒粕の配合やブレンドの仕方を変えたりしています。保存後は、貝柱と酒粕を機械で約30分ほど混ぜ、それから約1~2週間漬け込みます。そしてやっと出荷となるんです。

Q・漬け物の食べごろってあるんですか…?
A・これは好みによりますが…、漬けた最初のころって、あまり塩っけがにじみ出てこないんですよ。粕漬けは1日1日味も変わり、色も変わるんです。賞味期限は常温で90日間ですが、私がお薦めするのは、常温で1ヶ月ぐらいが食べごろのピークですね!

Q・有明海では現在水揚げ量が激減していますが、影響はどの程度ありますか?
A・ここが一番問題ですが…。作る分は簡単なんですが、買い付けが難しいんです。有明海では、現在ではほとんどノリ漁業が主になってしまいました。ノリ漁業の後にウミタケなどの仕入れを行うのですが、仕入れの状態が塩漬けされていたり、されていなかったりとバラバラ。ここ10年で、ノリ漁業もウミタケ漁も後継者が育たなくなってしまい、以前のようにきっちり同じ状態で、安定して仕入れることができなくなってしまったんです。
また、日本酒の酒粕も同じで現在、佐賀はすっかり焼酎派になってしまいました。酒蔵も激減し、酒粕が集まらない…そこで安定供給のために、銘酒を広島や京都から仕入れ、たいらぎにおいては輸入に頼らざるを得ない状況です。

Q・珍味であり、漬け物の「竹八漬」のおいしさはどこにあるんでしょうか?
A・ズバリ、酒粕ですね。もちろん素材も高品質ですが。祖父は何よりも酒粕にこだわったそうです。粕になる酒は吟醸に近い純米銘酒で何種類かブレンドし味を作っていきます。 酒粕は発酵食品だから、日々生きている。だからこそおいしいし、味が変わっていくのも面白いですよね。でもお客様の中にはずっと変わらない味を求める方も多いので、基本は味を変えないように作っています。でも、必ず変わっていきます。酒粕にはクセがなく、味がない食べ物が合います。貝柱はちょっと甘みがあって、適度な塩っけもあって、粕漬けにはピッタリですね。

Q・お客さんの反応はいかがですか…?
A・リピーターで年輩の方が多いです。やはり、食卓には必ず漬け物が置いてあった世代ですからね。また、全国各地で物産展に出品したり、こうやって「さがファン」で通信販売していますが、皆さん最初は「何これ?」から入るようです。珍味なの?漬け物なの?何物なの?って(笑)。でも、一回購入して試していただけるとハマっていただけるようでうれしいですね。私としては、若い方にこそ食べていただきたいです。ほかほかの白ごはんにかけるのもおいしいですが、お酒のつまみには本当にピッタリですから!

Q・漬け物の食べ方、漬け物の日常的な役割って何でしょう?
A・昔は食卓に各家庭で漬けた、漬け物があるのが当たり前でした。今はあまり見られない光景ですね。でもほかほかの白ごはんや、お酒のおつまみに、ひとつ加えるだけで、ごはんやお酒がより美味しくなる。佐賀で今ポピュラーな漬け物といえば、青高菜ですかね。
粕漬けになると、うちと、玄海灘の方で松浦漬、玄海漬というものがあります。有明海の珍味の代表的な漬け物は、うちでも売れ筋No.1の「真がに漬」。唐辛子をブレンドしたピリ辛でごはんにちょっとつけるだけ、お箸でちょっとなめるだけで、ごはんもお酒もいけます。でも人気なのに、クレームも一番多いんですよ。「食べ方がわからない!」って。普通の漬け物感覚でガバッと食べると、口から火吹きますからね(笑)。そこで最近、食べ方の説明書もつけました(笑)。

Q・今後「さがファン」で展開していきたいことってありますか?
A・やはり、まだ知名度が低いので、より多くの皆様に知っていただくようにアプローチしたいですね。物産展のときに、「さがファン」のアドレスを書いたちらしを配ったり…とかですね。また、うちではこれも珍味「わらすぼ」も売ってるんですよ。昔はこの辺りの各家庭の軒下でぶらさがっていたものでしたが、ずいぶん水揚げ量も減ってしまいました。
こちらもビールなどのおつまみにピッタリ。おいしい珍味がたくさんあって、おいしい食べ方がたくさんあるっていうことを、ネットを通じて伝えていきたいと思っています。

Q・これからの「竹八」さんの目標を教えてください。
A・時代は変わっていっていますが、私たちは75年伝統の味を守り続けてきました。昔は「粕漬け=竹八」と呼ばれたものです。先代の祖父が言っていたのは「商いはまごころ」。決して「有名だから買う」のではなく、「おいしいから買ったよ」と言われることを喜んでいました。昔、うちの漬け物を食べた人が「この味だ、変わっていない」と思い出してくれたらうれしいですね。そして、再び、「粕漬けといえば竹八漬」と言われるようになりたいです。そして、全国の人が佐賀に来た時に「佐賀にはこんな味があるんだ!」と発見してもらい、佐賀の特産品として認めていただけるようになれれば…。佐賀に来たから「竹八漬」を買って帰ろう…というように、佐賀のおみやげとして定着させていきたいなと思っています!


看板
ロビーには立派な「竹八漬」の看板が。歴史を感じさせる重厚なシンボル。

外観
佐賀市川副町にある「竹八」。町内には数社漬け物屋さんがある中で一番の老舗。

商品集合
コツコツと職人の手で作り上げた伝統の味の数々。漬け物のある生活が始めたくなった取材だった。

>> 竹八漬けの商品はこちらからご購入いただけます。
  


Posted by さがファンショッピング  at 09:30Comments(0)竹八漬