店主訪問記

2010年02月26日

福岡精肉デリカ 福岡 勤さん

福岡勤さん
福岡精肉デリカ
代表取締役
福岡勤さん

現実に真摯に向き合うことで見える
本当の「安心安全・地産地消」

 町の顔といえば商店街。生活に必要なものが全部揃い、所狭しと店が軒を並べ、町ゆく人々がお互いに声をかけ合う…いわばコミュニケーションの通りと言っても良かった。佐賀市内、呉服町名店街のアーケードが姿を消したのは昨年。かつて人々であふれた通りには寂しい風景が広がる。そこに今、全国的に話題になっている店が1軒。「和牛石けん」を作ったばかりの「福岡精肉デリカ」さんだ。町の発信地・商店街の隆盛と衰退を目の当たりにしてきた店長の福岡さんは過去を熱っぽく振り返り、将来を冷静に語った。



Q・佐賀産和牛を使った牛脂石けんを商品開発したことで話題になっていますね。お店の歴史を教えてください。
A・昭和30年に創業して私が2代目です。肉屋の前にはここ呉服元町で父がアイスキャンデーの製造を行っていました。ちょうど食の欧米化が進んでいたころで、肉屋に商売替えをしたんですね。また、アイスに使っていた冷凍機もそのまま利用できましたし、今では肉屋の営業にはさまざまな許可証が要りますが、私の子ども時代、肉はもっと身近でした。小学校の時には鶏、中学生の時は豚を、高校生の時は牛を一頭さばいていたんですよ。


Q・商店街も衰退し、"町のお肉屋さん"が少なくなりましたが「福岡精肉デリカ」さんは元気ですね。その理由は?
A・商品開発も地域での食育活動も全部時代の流れによるものです。元々肉屋を継ぐ予定ではなかったのですが、急遽2代目になった時、すべての肉をさばけても精肉や商品流通システムの知識は0でした。他店に修行に行くわけにもいかないし、食肉学校は全寮制。包丁の研ぎ方、肉の重ね方など全部、業界誌や本で独学したんですよ。1人前になるまでに10年かかりました。師匠がいなかったので独学の中、流通についても考えていました。その時から、お客さんを観察していると時代の流れが少し読めるようになったんです。


Q・時代の流れが、どのように今日の活動につながったんですか?
A・転機は大型スーパーが進出した20数年前です。にぎわっていた商店街が衰退し、お客さんもとられてしまい、今まで通りの営業ではいけないな、と思いました。そこで、また大型スーパーの流通についてさんざん独学で勉強して、同じ肉を扱う立場でもシステムが全然違うことがわかったんですね。そこで、同じ土俵では絶対太刀打ちできない、とわかり、別の視点から動かないとムリだと気づきました。地場専門店ならではの動きをしなければ、と。そこで行き着いた信念が「地産地消・安心安全」だったんです。


Q・マーケットが広がるほど消費者の選択肢は増えましたが、同時に肉に関する問題も多く出ていますよね。
A・その問題に肉の専門店としてはしっかり向き合っていきたかったんです。15年前、イギリスで狂牛病が問題になり、子どもたちに影響が及んだという話を聞いた時、食べ物を売るということがどんなに大変で、責任があることなのかを改めて知りました。現在、私が「食育むすびの会」で代表を務め、活動しているのもその理由からです。口に入れるものは体に大きな影響を与えるので、それは牛や豚も同じ。生産者の顔がわかるラベルを貼っているのもこの時代に「安心・安全」をお客さんにわかっていただきたいからです。


Q・「安心・安全」が当たり前ではない、と消費者も認識しないといけないですね。こちらを追究していったら「地産地消」に当たったんですか?
A・どこの専門店もそうだと思いますよ。「さがファン」で出している「佐賀牛カレー」もうちの手作りですし、「100%佐賀牛カレーパン」は鳥栖にある知人の製パン業者とのコラボです。最近の和牛石けん「さらり」も自分の経験から作ったもので、まさかここまで話題になると思わなかったんですよ。


Q・でも上手い具合にブームに乗っていますよね。「佐賀牛朝カレー」とか。石けん美顔法も大人気ですし。これは偶然ですか?
A・偶然ですよ。そんなに商売に色気があったら多分別のことをしていますね(笑)。カレーやカレーパン、石けんも商品化に数年かかっていますし、決してブームに乗ったわけではありません。商品化の後、お客さんの流れを見て、いろいろ変化をつけていったという感じです。以前、コンサルティング業者が店に入った時、信念は別として「普通の肉屋ではいけない」とは客観的に感じたんですね。それから商品開発を始めました。ですから今回の「さらり」もこれからお客さんをじっくり観察して、売り方に変化を加えていかないと、という感じです。話題になるなど予測もしなかったので少々戸惑っているくらいです。


Q・そもそも「さらり」はどのように生まれたんですか?
A・手荒れで困っている知人と話して、そういえば私はずっと水仕事をしているのに肌が荒れないな、と不思議に思ったんです。理由は毎日肉を触っているからかな?と。それで調べてみたら、牛脂は美容に大変いいということがわかったんですね。今では、さっき話題に出た肉に関する問題もあり、植物性の化粧品が主流ですが、昔は動物性脂を使って石けんを作っていたんです。それでは、石けんの発祥をあまった牛脂で再現してみよう!と。最初は手作りで石けんを作り、3年間自分の体で人体実験したんですよ。そして、徐々に知人に試してもらって。そして好評だったので、業者に持ち込んだんですけど難色を示されて…やっと良い業者にめぐり合えて、商品化が実現したんです。


Q・肉屋さんが石けんを作るなど、前例がなかったですからね。これで地元が盛り上がってくれればいいのですが…。
A・商店街を以前のように元気にするのは難しいですね。しかし、自己満足だけではなく、別の場所で何かを作り、発信していくことは地場の専門店として必要だと思います。まずは自分の展開から。その気持ちと行動が、周りと一緒になればいいなと思いますね。そうしたら、違う新しいものができますから。結果、佐賀への恩返しになれば、と思います。


Q・それが「福岡精肉デリカ」さんの"仕事"というわけですね。「さがファン」を含め、今後の展開を教えてください。
A・新聞を見て、「さらり」の問い合わせをしてきた方々はほとんど電話なんですね。また年齢の高い方も多かったんです。購入できるのは通販と店舗のみですから、今こそ「さがファン」の力を借りないといけないですね。ブログも稼動していないので、お客さんのためにもネットを有効に活用していくことは、今後の大きな課題です。また、食に対する勉強や活動はずっと携わっていくつもりです。現在、お店で料理教室も開催しているので、興味がある方はぜひ、お気軽に尋ねてくださいね!


商店街
舗装工事が行われている「呉服町名店街」。
佐賀城下ひなまつり期間中は通りがいつもより華やかに。
656広場では食堂がオープンし、福岡精肉デリカさんも出店している。

店頭カレー
大人気のカレーはレジの人に一声かけて。
カレーにも生産者や牛が育てられた場所がわかる個体識別番号がついている。

店頭肉
保存料無添加というシールがついているが、店頭に並ぶベーコンの色を見れば一目瞭然だ。

外観 店頭さらり
656広場の目の前にお店を構える。
日差しで肉が傷まないように防止したよしずが目印。
店頭でも「さらり」を購入できる。

>> 福岡精肉デリカの商品はこちらからご購入いただけます。

  


Posted by さがファンショッピング  at 10:19Comments(0)福岡精肉・デリカ