2016年03月31日
「イデマン」鶴 恵美子さん
井手食品有限会社
(イデマン味噌醤油醸造元)
取締役
鶴 恵美子さん
「あったらいいな」がアイデアの元
“うちごはん”から広がる料理の輪
神埼・吉野ヶ里に根付いて創業百余年。地域の人々から町の味噌、しょう油屋さんとして親しまれている「イデマン」さん。老舗でありながら、次々にアイデアを生み、新しい商品開発を行うのは4代目おかみの鶴さんだ。若い世代の味噌汁離れや、料理に時間をかけられない忙しいお母さんの役に立ちたい!と女性ならではの視点で発信を続ける鶴さん。1年半ぶりの訪問で新しい商品や試みについて、じっくりお話を伺った。
Q・前回から商品がまた増えた気がします!商品開発のペースは…?
A・年に1~2回のペースで商品開発を行っています。前回の店主訪問記でも語っていますが、ベースとなるものは料理の時短となる“うちごはん”。「あったらいいな」の想いから、味噌・しょう油以外の調味料の開発を始めました。調味料があれば料理も時間短縮され、より簡単になりますからね。
Q・最近のイチオシ商品は…?どこから商品開発へのアイデアが生まれるんでしょう。
A・まだ発売1年目にして「イデマン」人気№2の万能調味料「からあげだれ」です!
アイデアというより、こういう調味料があったら料理時間が短くなるなという思いから作ってみようという好奇心とも言えますね。元々あるものをブレンドするのでムダも全くありません(笑)。それを自宅で試して子どもたちや家族の反応を見て、良かったらラベルを作って即店頭に並べます。
Q・ラベルもすべて鶴さんの手作りですよね。家庭の味がすぐに店頭に…頼もしい!そして「からあげだれ」はどうして人気になったのでしょう?
A・多くのお客様から「からあげは家で作らない」という言葉をいただいたんです。でも「からあげだれ」にはニンニクとショウガが入っていますし、「イデマン」特製の米麹で仕込んだ塩麹をたっぷり使っていて塩気と甘味をバランス良く組み合わせているので、からあげ以外にも絶対使える!と思ったんです。するとお客様から「チャーハンや炒め物に使ってみたら美味しかったよ」という声をちらほらいただいたんです。そこで漬け込みダレだけではなく、かけ、つけ、いろいろな料理に使えることを新しいチラシを作って紹介し、レシピを作って「おかみブログ」で紹介して…ラベルも貼り替えました!最近ではスープやみそ汁に使っているという方もいらっしゃるんですよ。
Q・さすがですね!鶴さんの気配りと行動力があれば、すぐに商品の良さが広まりますね。
A・もともと「さがファン」でネット通販を始める前に、少しでも店の宣伝になればと始めた「吉野ヶ里の醤油屋おかみブログ」ですが、今、こちらが店の情報源となっています。パソコンをご覧にならない客層の方たちには、毎月発行の「イデ萬新聞」で店、商品、イベント、町の情報をお知らせしています。特にブログではレシピや、最新情報を毎日載せているので、チェックをされてから来店される方が多いですね。
Q・最近では発酵食品が注目されているのもあり、生麹の予約販売が多いそうですね。
A・こちらもブログで予約を受け付け、仕上がり日を公表して来店を促しています。以前は町のイベントに持っていき皆さんに販売していましたが、今ではそちらに持っていけないほど予約で埋まってしまうように。元々、家庭で味噌や甘酒などを作られるリピーター様に向けて生麹を販売していましたが、数年前の塩麹ブームの際、一気に注目度が上がったんです。全国的に醸造元が生麹の値段を上げた時も、うちでは値段を上げることはせず、遠方からも買いに来られる方も増えました。月に一度の生麹の仕上がりを心待ちにしているお客様も多く、生麹の予約販売のおかげで来店のお客様も増えたんですよ。
Q・ぜひ「さがファン」でも販売してほしいですね!可能ですか?
A・生麹は生き物なので温度管理がとても大切です。夏場は熱さで菌が死んでしまうので、秋から5月まで仕込みを行っています。冬場の限定販売なら可能だと思いますよ。また生麹づくりは日々、より良い麹が仕上がるように毎回改良をしながら昔ながらの製法で行っています。
Q・「おかみブログ」でも生麹に関する記事が人気ですね。鶴さんの麹づくりへの想いも伝わってきます。
A・小さなころから、生麹づくりで一番大切な手入れ作業は手伝ってきました。その度に亡くなった両親から「麹菌は生き物だから、つくる時は美味しくなるようにと気持ちを込めること」と言われたことを良く覚えています。だから、ブログでも新聞でも生麹に対しては「麹さん」と呼んで生き物扱いにしているんですよ。予約された方にも「明日、お迎えをお願いします」、「出来立てに会いに来てください」などと書いています(笑)。
Q・人気№1商品「ごま和え胡麻」も販路拡大して全国区になっていきましたね。
A・ここ2年ほど、全国の食の展示会で注目されるようになりましたね。ゴマとビタミンEの王様アーモンドを組み合わせ、アンチエイジングを意識した商品ですが、こちらも商品開発当初はこんなに売れると思わなかったんです。ゴマの栄養素、セサミンが健康にいいのは知っていましたが、当時、うちにさばぶしを使ったふりかけの商品の在庫があったので、健康と美容に良いものを混ぜてみよう!と(笑)。業務用のアーモンドとすりごまとさばぶしを混ぜて、袋に入れて店に出してみたんです。全国で注目されたのは、1Lのペットボトル瓶のタイプ。うちはしょう油屋ですので、しょう油のペットボトルはたくさんありました。そこに「ごま和え胡麻」を入れたところ、そのインパクトの強さから、バイヤーさんが驚いて手にとって、そして食べてみて美味しさや手軽さに感動されて。そこから広まっていきました。
Q・本当にムダがないですね!ペットボトルタイプは手にくっつかないし、楽だし重宝していますよ。サラダやパスタ、ふりかけ、何にでも使えます。
A・移動販売のたこ焼き屋さんも、トッピングに「ごま和え胡麻」を使ったところ、お客様に好評だったそうで、「粋たまごかけしょうゆ」などいろいろうちの万能調味料を試していただいています。ペットボトル瓶タイプの少量型容器はギフトにもピッタリですし、いろいろ試す楽しみもあって、「よりどり選べる5本セット」、「10本セット(2箱組)」も好評なんですよ。
Q・「イデマン」オリジナル商品は全部で40種。小さな容量のものから一つひとつ試していけるのも魅力です。
A・同じ商品でも数種類の容器に分けて、お試ししやすいようにしています。味噌・しょう油店ならでは、味噌のたまり汁を使った「焼肉のたれ」は定番ですし、お客様の意見を取り入れながら商品開発を行っています。現在は新しいポン酢づくりを試作しているところ。現在、佐賀県産ゆず果汁を使用した「ゆずポン酢」がありますが、ノンオイルドレッシングが好まれる今、違った種類のポン酢シリーズも出したいと開発中です。
Q・鶴さん手作りの筆文字を使ったラベルもオシャレですが、最近では筆文字への注文が相次いでいるとか?
A・最初はお客様にお子様が生まれた際、内祝に贈る品にお子様の名前を筆文字で書いて、名前に沿った詩とイラストをカードにして添えたんです。そこから、お客様から個人的に注文が入るようになりまして、ギフトの際のカードづくりはもちろん、名前ポエムをたくさん描かせていただいています。最近では隣の幼稚園の卒園記念品として、先生含め85名の名前ポエムを描きました!今度、吉野ヶ里町で行われるイベントでも筆文字を現地で描きます。
Q・おかみ、商品開発、対外発信、イベント企画、パッケージ制作、筆文字サイドビジネスまで…パワフルですね!
A・寝ている時以外は、何かしらやっています(笑)。やっぱり、大学時代に芸術学部で絵や書、デザインを学んでモノを作ることが好きだったので、普通のお店のおかみにはなれませんね。これからも私のあったらいいな、とお客様のあったらいいな、をどんどん作っていきたいと思っています。今後の目標は「イデマン」で味噌やしょう油、調味料づくりなどのワークショップを定期的に開催すること。以前、塩麹教室を行った時、発酵食に興味はあるけれど、店に来るのが初めてという方に多くお会いしたんです。これからは店を拠点に出会いの場を広げて行きたいと思っています!
「イデマン」人気№1、全部で6種類もある「ごま和え胡麻」(40g~470g)。特製塩麹を使用した万能ダレ「からあげだれ」は人気№2。レシピは「おかみブログ」をチェック。
全部で10種類の商品から選べるギフト「贈心(おくりごころ)」は「5本セット」と「10本セット(2箱組)」。これからは母の日のギフトにもピッタリ。
「よしのがり菜彩」は吉野ヶ里で自家製の有機肥料のみを使い、世界の野菜を生産している「あいちゃん農園」とのコラボから生まれた“食べる彩り野菜ドレッシング”。イタリア野菜のビーツとセロリアックを使った、無添加で栄養分たっぷりのブランド商品だ。
温かみあふれる筆文字名前ポエム。好きな動物やキャラクター、職業に応じたイラストも描いてくれる。注文は「おかみブログ」から。
木を基調とした店内はジャズが流れ、明るく開放的。地元の人々が集う空間にもなっている。
国道385線沿い、山々に囲まれた美しい平野にたたずむ「イデマン」。この環境こそが美味しい味噌・しょう油、たくさんの調味料を生み出している。