店主訪問記

2018年08月31日

塩のり工房「有明の風」東島 香代子さん

有明の風 東島 香代子さん
有明の風
東島 香代子さん

『有明の風』ブランドを新たに確立
佐賀のりの底上げをバックアップ!

 一度食べれば虜になる佐賀のり。その生産者の顔を見て、話し、食べて、よりファンになる。直販事業を始めて12年目、パッケージや直販店内の装飾を一新、新しいスタッフも迎えた『有明の風』。“美味しい佐賀海苔の一メーカー”から、“佐賀海苔なら『有明の風』”というブランドに成長し、『さがファンの店主訪問記』でもその進化ぶりを追い、ともに喜びを感じて来た。今回は、東島家に嫁ぎ海苔の道を歩むことを決意した、笑顔の眩しい香代子さんに2度目のインタビュー。


Q・約2年前、お伺いした前回『有明の風』入社したてでしたね。ここ2年、さまざまな場所で商品が見られるようになりましたよ!
A・おかげさまで、直販を始めて今年で12年目。健康食ブームもあり、ネットの普及やメディアの取り上げもありまして、佐賀のりがずいぶん注目されるようになりました。『有明の風』では、まず海苔に関心がなかったお客様層に親しんでいただくきっかけに、今では定番となった『めんたい塩のり』や、昨年発売した新商品『わさび塩のり』などスナック海苔のPRからスタートしたのですが、今では佐賀海苔の王道である『焼のり』が注目を浴びているんです。その中でも味と香りが際立つのりを『プレミアム』とし、『プレミアム焼のり』を新商品化しました。ふるさと納税の返礼品に一番選ばれる商品なんですよ。

Q・消費者には佐賀海苔本来の味がわかる『焼のり』にたどりついてほしい!…海苔漁師のお義父さん(東島吉孝さん)の願いが叶いつつあるんですね。
A・そうですね!全国に佐賀海苔のファンが増えているのはとても嬉しいですね。7月末に放映された、マツコ・デラックスさん司会のTV番組「マツコの知らない世界」では海苔がテーマだったんです。全国5大産地(仙台湾/東京湾/伊勢・三河湾/瀬戸内海/有明海)の海苔を食べ比べる内容でしたが、海苔に造詣が深いコメンテーターの方の一押しが「有明海の佐賀海苔」だったんですよ。日本各地、潮の流れや干満の差などで味や香り、柔らかさが異なるんですが、佐賀海苔の特徴は“パリッ、サクッ、トロリ”。人それぞれ好みはあるでしょうが、口の中でふわっと海苔の香りが広がり、とろけていくような柔らかさ、そして食べた後に舌に残るうまみ…この繊細さが生み出す海苔の美味しさはどこにも負けないと思っています。その魅力が一番わかるのは『焼のり』なんですよ。

Q・手間ひま…は想像できます。しかし、我々ファンは喜んでいますよ!他の商品と食べ比べてみたら…(試食)、、、、全然違う!
A・でしょう!実は手間ひまの中に、保存の仕方や賞味期限の決め方という課題がありまして…。私は『有明の風』に入社して、最初の1年間は海苔のベストな保存について取り組んでいました。いかに焼立ての美しさをそのままお届けできるか!お義母さんと包材屋さんとともにとにかく何度も試験を繰り返し、ようやく安定したところです。ベストな配合が決まるまで、やはり1年半ぐらいかかりましたね。

Q・いやー、香代子さん、もう立派な『有明の風』の顔ですね!前回と表情も発言も違います!
A・ははは。お義父さんからは「まだまだ、海苔のこと勉強不足や」と言われ、常に熱い説教を受けます(笑)。その度に頑張ろう!って思うんですよ。今はお義父さんの生産部隊と、お義母さんによる加工部隊と、仕事がきっちり分かれているんです。以前は生産も加工も、少数精鋭、家族でみんな行っていたみたいですが、最近は役割分担ができてきて、少し流れがスムーズになってきましたが、そこに甘んじることなく、ちゃんと生産部隊、加工部隊とコミュニケーションをとっていきたいところです。

Q・今夏はサッポロビール「麦とホップ」の「“それだけでうまいコンビ”当たる!」キャンペーンに採用され、ますます、佐賀海苔の認知度が上がっていますね。
A・ありがたく思っています。また今、人手が足りなくて以前のように、百貨店の催事に参加することもなかなかままならないんです。でも、どこかで私たちの海苔を食べてくださって、その上、広めていただくなんて本当にうれしい事ですよね。色んな方々のご支援やPR活動によって佐賀のりの認知が高まり、「有明の風」を知って頂けていることに本当に感謝しています。ぐるなびのippinでは、“ミス”の称号を持ち、日本女性の美しさを引き出す活動をされている、一般社団法人ミス日本協会理事の和田あいさんにもご紹介頂きました。

Q・わあ、これから健康食だけじゃなく、美容食として展開できそうですね。やはり美しい女性に「海苔がいい」と言われると納得します。
A・そうなんですよ!『わさび塩のり』の次の新商品は、まったく形態や目的を変えて、美容に特化した“ポケットのり”みたいなものを作りたいんです。「カロリーメイト」みたいに、ササッとバッグのポケットから取り出して…いや「都こんぶ」でしょうか(笑)。でも、海苔は歯につくので、パッケージの裏にちょっと鏡を仕込んだりしてですね……。

Q・いいですねえ。ビューティーポケットのり!パッケージに成分表をオシャレに載せて…夢が広がりますね。
A・やりたいですね…!でも、このところ、年間通じて時間がゆっくりとれる時ってないんです。以前は海苔のシーズン(9月~3月)以外は、割とのんびりしていて新商品開発に充てていたんですが、ありがたいことに、全国からOEMなど委託加工も急増しまして、日々忙しくしています。しかし、時間をみつけて新商品の開発は進めて行きたいと思っています。

Q・これから(9月~)いよいよ、シーズンです。
A・まずは海苔網をつける支柱となる竹を海に設置していく作業が始まります。10kg程ある竹を手作業で1本1本立てていくとても大変な作業です。お義父さんは、老体とは思えないパワーで頑張っています!私は、お義父さんを支え続け、お義父さんのつくった海苔をよりおいしく加工して世の中に広めていったお義母さんの思いと技術を引き継ぎたいんです。やっぱりノリだけに典子さん(笑)。まだまだ海苔の世界に入って2年ほどですが、はやくお義母さんの頼れる右腕になりたい、と頑張っている毎日です。



パンフレット家族写真
店内商品
昨年の9月、価格改定にともない『有明の風』ブランドを再統一。パッケージも新たにして、パンフレットも作成。香代子さんもブランドを代表する一員として登場している

昔ひとくちギフト昔ひとくち袋
店内商品
一枚一枚、焼き加減は色味を見て品質チェック。加工職人がどの工程にも携われるよう、加工はローテーションを組んであたっている

昔ひとくちギフト昔ひとくち袋
(左)一瞬で焼き上がり、塩や油を乗せることができる機械。温度や湿度により設定を誤ると大量なロスを出してしまうので、機械による加工も慎重に行わねばならない。(右)商品用にタテ21cm・ヨコ19cmの海苔を8つ切りにカットする

昔ひとくちギフト
加工が終わったら丁寧にパック詰め。商品は隣接の直販店舗、佐賀県内の産直市場や道の駅などに並べられ、私たちの手元に届く。

>> 「塩のり工房 有明の風」の商品はこちらからご購入いただけます。

取材:森泉敦子

  


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2017年09月06日

塩のり工房「有明の風」東島吉孝さん

有明の風 東島 吉孝さん
有明の風
東島 吉孝さん

1に味、2に安全・安心、3に適性価格
"キチッ"と海苔を育て、作ることが使命

 12年連続で生産高全国トップを走る、佐賀有明海の海苔。2007年、業界初の直販店をオープン、今年で10周年を迎える『有明の風』さん。8年前の初取材以来、毎回、海苔に懸ける熱い想いに心打たれ、ずっとその美味しさに心奪われ。生産、加工、販売とすでに10年前には6次化産業を先駆けて実現。並々ならぬ覚悟と情熱で成功に導いた、エリア最年長漁師・東島吉孝さん。”まだ引退するわけにはいかん”。じっくりお話を伺った。


≪東島一家の熱い思いはコチラから≫
★「海苔はおにぎりの包装紙じゃない!」初インタビュー…2009年6月
★夫婦2人3脚―典子さん、夢を語る…2010年10月
★海苔収穫真っ最中に工場突撃!…2012年3月
★店舗大改装!「すべてはガレージから始まる」…2013年7月
★テレビでも活躍!若手ホープ・香代子さん加入…2016年6月

Q・10周年おめでとうございます。新商品『ワサビ塩のり』も9月から新登場です!
A・10年前、海苔養殖漁業の生産者が直販事業を行うことは常識外のことでした。今では農業も含め直販は当たり前のようになっていますが、直販を行う漁師はまだ出てきていないんです。なので、それだけ難しいってことなんでしょうね。10年前はちょうど「地産地消」という言葉の認知度が高まっていた頃。それ以前から、漁師仲間の集まりでは「自分らが作った自信のある海苔を、直接消費者に届けたかね」という話が良く出ていました。しかし伝統業である海苔漁業は旧態依然としていて、漁協との兼ね合いもあり、なかなか新しいことに挑戦できない世界ではあります。まずネットで通販を始め、自宅横に直売所を設け、2011年には効率化の為、オーダーメイドの大型乾燥機を購入し、新商品を1年に1度ほど開発するなど、時代の流れを見ながらコツコツとやってきました。おかげさまで、全国に根強いリピーターさんができ、販路もグーッと広がったんです。

Q・PRの為に、百貨店の催事などに積極的に参加されていた時もありましたね。
A・そんな時代もありましたね。やっぱり、柔らかさが一番の佐賀有明の海苔って食べてもらわないと良さがわからないんですよ。広がり方としては、食べた方が人に勧め、もらった方がまた人に勧め…というクチコミが一番でした。昔、海苔は贈答品として有名でしたが、「贈る」という点は今でも一緒なんです。最近では「ふるさと納税」の返礼品に海苔を選ばれる方が増えましたね。『有明の風』に新商品である、ワサビパウダーを塩海苔にまぶした『ワサビ塩のり』や人気の『めんたい塩のり』『黒こしょう塩のり』など、スナック海苔があるのは、若い人に気軽に海苔に触れてほしいから。私としてはそれをきっかけに海苔の本当の美味しさがわかる『焼のり』の魅力に触れてほしいと思っています。スナック海苔はサイズも海苔(21cm×19cm)を8切にしたモノで、値段も手ごろ。ちょっとした手土産にもピッタリ。これは全部、うちの奥さんのアイデアによるものなんです。

Q・商品数も増えましたね!また経理に奥さん・典子さんの妹さん、広報に息子さんの奥さんである香代子さんがスタッフとして入られ、組織体制もきっちりしましたよね。
A・海苔業は家業として家族全体で行うものですが、最近、加工・販売業の方は女性チームに任せています…というか、締め出されちゃいました(笑)。体制が安定して、技術力も上がり、生産の長は私、工場長は奥さん、ときっちり分業できるようになったんですよ。昔は奥さんと一緒に海に出て、夫婦二人三脚でやってきました。奥さんが体調を壊して生産から離れた時期に、直販のアイデアが持ち上がったんです。海苔は秋から春までがシーズンなので、それ以外の時期はやることがないんですね。ですので、昔から家訓として漁師の家は副業を持っているのが当たり前でした。うちでは酒屋を営んでいたのですが、コンビニの台頭によりそれも難しくなり…直販に踏み出すいい機会でもありましたね。

Q・今振り返ると、近年大きく叫ばれている「6次産業化」の先駆けだったんですね。
A・本当ですね。今では催事などに行って自らPRしなくて良くなりました。私たちの取り組みを見て、県や市などの自治体、企業や団体、大学、高校…そして同業者が逆に尋ねてくるようになったんです。年々、食に対する意識が高まり、特に海苔は世間から健康食として注目を浴びるようになりました。予防医学を研究する大学のチームや糖尿病など病気を研究するNPO団体などからも、良くお声がかかるんですよ。

Q・常におてんとう様のご機嫌をうかがって、海苔漁師を続けている東島さん。時代の波を読む力にも驚かされます。
A・海苔の養殖が佐賀の有明海で始まったのは、昭和27年(1952年)、海苔漁業のピークはそれから10年ほどたった昭和39年(1964年)頃です。その頃は1シーズンで自宅が建つ、いわゆる海苔御殿が有名でした。その頃、海苔は「博打草」と言われるぐらいで、海苔バブルに浮かれた漁師が、大型に設備投資を行い失敗した例も少なくありません。この55年間で、佐賀有明で生き残った漁師は3分の1ぐらいですね。技術の向上とともに、博打草ではなくなり、不作の時も安定して供給できるようになりました。

Q・高級海苔として昔のように贈答品においての需要が減っても、佐賀、有明海の海苔は常に生産高トップをキープし、安定供給を続けていますね。
A・これも時代の流れです。今、有明海苔の一番のお得意先はコンビニです。全国のコンビニ約5万件に、毎日各何千枚と出荷しているんですよ。コンビニも競争ですから、美味しい海苔で巻いたおにぎりが食べたいというお客様に応えたい、と有明海苔への需要が増えているんです。ここ数年は不作でしたが、海苔の単価が上がり続けています。低品質でも品薄だから高値が付くんですよね。これは異常事態と言ってもいいぐらい。平成12年(2000年)の大凶作以来、海苔養殖漁師たちは10数年間、経験や技術を駆使して、安定供給を保つ努力をしてきました。不作になる理由は、佐賀有明海に限った話ではなく、「地球温暖化」、この一言に尽きます。ですので今年9月から直販商品は泣く泣く初の値上げを決定しました。うちは5%ほどですが、大手メーカ―は15%~20%値上げしています。

Q・後継者不足も根強い課題です。
A・近年のブームによって、農業にチャレンジする若者は増えているんですよ。自分たちが食べられる分は作れても、なかなかビジネスにするには難しいとは思いますが。しかし、海苔養殖漁業はもっと難しい。船などの初期投資、セリにかけられるなどの競業、漁協などの体制、技術…難点をあげればキリがありません。現在、修業中の身で活躍しているのは大方、30代の3代目ですが、子どもの頃から海苔漁師になると覚悟して、家業を継いだ若手ばかり。通常メインの漁師と助手であるサブ、2人で船に乗りますが、今、この助手の成り手がいないんです。ですので、私はハローワークを利用して、毎年、若者を数人雇っています。それでも「経験してみたい」という若者や女性も尋ねてくることがあります。しかし、本職にする気はないんですよね。今のところは技術力のアップで、生産者が不足しても、毎年、安定供給を可能にしていますが、後継者不足は本当に根強い課題です。

Q・東島さんはこのエリアで最年長。前回のインタビューでは「65歳までは頑張る」とおっしゃっていましたが、65歳になられましたね。
A・まだまだ引退するわけにはいかんですね。でも単年度契約、ということで自分と取り決めしています(笑)。今年4月に、船の作業中に落ちて腰の骨を折ったんですよ。オフシーズンで本当に良かったです。昨年の11月は頭を打って、5時間ほど意識がなくなりまして…ケガがつきものという点も後継者不足の一因ですよね。その点で奥さんにはとても感謝しています。今は工場長として頑張ってくれている。相手を尊重する、尊敬する、ということを今、60代にして初めて学んでいる真っ最中です(笑)。新商品開発には、私は一切タッチしていません。『ワサビ塩のり』も今日、初めて詳細を知ったぐらいですから(笑)。でも、加工・販売においてはすべて任せています。それだけ信じているってことなんでしょうね…ってなんか照れますねえ(笑)。

Q・もうケガは本当に気を付けてくださいね!まだまだ東島さんを追っていきますよ。最後に改めて、『有明の風』の魅力、そして今後の抱負を聞かせてください。
A・1に味、2に安全・安心、3に適性価格。海苔は生産地によって特徴がありますが、佐賀有明の海苔は柔らかさが一番の特徴です。黒くて美しく、病害を防ぐ酸処理剤をできるだけ使わず、海苔本来の香りに満ちた味の海苔。その海苔を手をかけて加工し、適性価格で、お客様にお届けしたいと思っています。大量生産・消費ではなく、ただキチッと海苔を育てたい。網を張ったら人間の都合は関係なく、海苔の都合で動かなければなりません。おてんとう様と自然が相手。それが「キチッと」ということなんです。丁寧に作った美味しい秋海苔、新海苔、冬海苔…常に理想の海苔づくりを追い求めていきたいですね。現在は「スサビノリ」という種ですが、幻といわれる『アサクサノリ』の生産も同時に有志とともに行っています。病気に弱いアサクサノリは育つ確率が50%。しかし、プレミアム海苔として、1枚50円で出荷し、市場では1枚150円以上の高値がつくんです。昔、海苔がいかに高級品だったことがわかりますよね。あと、ずっと言っていますが、太良町のカキ街道みたいに、海苔街道をつくりたいですね。おにぎり屋をつくったり、出張販売したり…夢は広がります。また、「海の男」ですから、環境活動を通した体験型観光「ブルーツーリズム」もやりたい!地域の子どもたちにも海の大切さを教えたい!…でも現場が一番…やっぱり、まだまだ引退の2文字は遠いですね(笑)。



有明の風有明の風
有明の風有明の風
10月初旬に網に種付けを行い、中旬には「のりひび」と言われる竿に網を張って、海中に沈めていく。干満差最大6mの有明海で、日々太陽に当たったり、海中にもぐったり、と"成長と抑制"を続けながら、強い佐賀有明海苔を育てていく


有明の風有明の風
二期作を行う『有明の風』。10月中ごろに海水に沈めた網の苗が、3~4㎝ほど成長したところで全体に張った網の半分を引き上げ、冷凍保存し、成長をストップさせる。もう半分の網についた苗は成長を続け、11月中旬には「一番摘み」。秋海苔、新海苔として12月のお歳暮シーズンにお目見えする


有明の風有明の風
有明の風有明の風
海苔の収穫は11月中旬から3月末まで。秋の収穫は4~5回行い、冬の収穫は10~12回行う。シーズン中は潮が満ちる早朝に、江湖(えご・水源のない川)にある漁船に乗り込む。収穫後は工場へ運び、作業を行い出荷。ピーク時には24時間態勢になることもある


有明の風有明の風
有明の風有明の風
いつも笑顔で温かく迎えてくれる『有明の風』の皆さん。船から工場へ運ばれた海苔は鮮度を維持する為、混ぜ続けた後、異物を取り除き、真水を入れてミンチ状にして洗浄。その後、水分を押し出して「21㎝×19㎝」の海苔の形にカットされ、約2時間半乾燥させる。加工場では一つひとつ手作業によって商品が作り上げられていく


>> 佐賀海苔「有明の風」の商品はこちらからご購入いただけます。

取材:森泉敦子

  


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2016年05月31日

塩のり工房「有明の風」東島 香代子さん


有明の風
東島 香代子さん

義父と義母の想いを受け継いで
健康食としての海苔の価値を高めたい

 毎回、家族のような温かさで迎えてくれる「有明の風」の東島一家。7年前の初取材の折、いただいた海苔の美味しさに衝撃を受けて以来、他社の海苔を食べるという選択肢がなくなった程だ。佐賀海苔直販のパイオニアとして迎える9年目、すっかり全国に熱烈リピーターが定着。訪れる度に新たな発見と感動があり、常に進化を続ける「有明の風」さんに今年から新スタッフが加入。東島家に嫁いだ若手ホープ・香代子さんに期待が高まる!



≪東島さんの熱いサクセスストーリーはコチラ≫
★「海苔はおにぎりの包装紙じゃない!」初インタビュー…2009年6月
★夫婦2人3脚―典子さん、夢を語る…2010年10月
★海苔収穫真っ最中に工場突撃!…2012年3月
★店舗大改装!「すべてはガレージから始まる」…2013年7月
★念願叶った海苔御殿で次世代に思いをはせて…2015年3月

Q・香代子さんが海苔の加工職人になろうと決意した理由は?
A・佐賀市内でファッション関係のショップを営む主人の店が、移転拡大したのがきっかけですね。お店の経営は最初も大変ですが、軌道に乗り、固定客がつくと慢心せずに再び新たな道を歩まなければなりません。私は主人と2人で店を切り盛りしながら、実家の直販店舗「有明の風」の成長も見てきました。どちらの店も今、次のステップに移る時期だと感じ、主人の店はスタッフさんに任せて家業に飛び込むことを決めたんです。

Q・ご主人の代わりに4代目を継ぐといっても過言じゃないですね。
A・海苔づくりは伝統業ですが、現在の大きな課題が後継者不足です。私の主人は最初から後を継ぐ気はありませんでしたが、お義父さん(東島吉孝さん)はそんな息子の頑張りを応援してくれています。現在、漁師業はお義父さんがやる気のある若者を育成中ですが、直販店を営むお義母さん(典子さん)の想いを継ぐ人がいないことに気付いたんです。義父と義母の海苔に懸ける想いは身に染みて知っていますので、じゃあ、私が店と加工分野は引き継ごう!と。

Q・頼もしいですね!実際に海苔の加工に携わってみていかがですか?
A・いやいやまだまだですよ。加工は本当に難しいです!お義母さんの職人技に少しでも近づけるよう必死です。昔は休日に海苔の種付け、商品をサービスエリアで販売するなどお手伝いはしていましたが、お手伝いとは全然違いますよね。何が難しいかというと、海苔を見極めること。加工においては天気、温度、湿度等によって、海苔に乗せる塩や油の塩梅が微妙に変わってきます。その日の海苔を目で見て、香って、食べて、その都度判断しなければなりません。この塩梅を間違えると商品の味が安定しませんので、常にアンテナを研ぎ澄ますよう努めています。また機械の操作を覚えるのも大変!今、まさに修業中といったところです。

Q・海苔の見極めに大切なことって何ですか?
A・まず、海苔の美味しさを知ることですね。私は主人と出会うまで、海苔はスーパーで売っている味付け海苔が普通の海苔だと思っていました。最初、お義父さんがつくった焼き海苔を食べた時、口の中でとろける食感を始めて体験し「えっ、これが同じ海苔?」とショックを受けたのを覚えています。結婚してからは毎日食卓に海苔が並び、娘も息子も毎日海苔を食べているので、すっかり美味しい海苔の味を身体が覚えています。商品用に加工する海苔も一番いいクラスの海苔を使っているので、素材の味を活かすための加工はとても繊細な作業なんです。

Q・加工はどのような流れで行うのですか?
A・今の時期はオフシーズンなので週1回、量も少なめの加工ですが、シーズンとなる11月からは2日に1回のペースで行います。「焼き海苔」からスタートし、「塩のり」「めんたい塩のり」と順序があり、大体1日7000枚、多い時で1万枚(※1枚=タテ21cm・ヨコ19cm)加工し、出来立てをその場でパック詰めします。「めんたい塩のり」はめんたいの粒によって機械が一番汚れるので、加工順序を変更することはできません。加工の量においては隣接の店舗で在庫チェックをその都度行っているので、足りない商品はすぐに加工してパックに詰め、店に並べていきます。ですので直接店舗にいらっしゃるお客様の中には、運が良ければ出来立ての商品に出合える方もいるんですよ。

Q・「有明の風」さんが直販を始めて9年目。今までの取材の度に、世に出る前の加工商品をたくさん試食させていただきました!今ではすべてが大ヒット商品になっています。
A・「梅入り初摘み海苔佃煮」など、すべてお義母さんのアイデアと信念と努力のたまものです。あと忍耐!お義母さんの忍耐力には本当に驚きますし、尊敬しています。昔はお義父さんと2人で海に出て漁師業もしていたというので、海苔への愛情がとても強いんですよ。また食べることが大変お好きですね(笑)。お義母さんと接していると、加工だけではなく、次シーズンは実際海に出てみたい!という気持ちが湧いてきています。

Q・海苔にはシーズンがありますが、ここ近年はオフシーズンもお忙しいようですね。
A・初夏から夏にかけてオフシーズンなので、現在、加工部隊は新商品開発を行う時期なんです。でもOEMなど委託加工がこの2年ほどで急増して、一年を通じて忙しくなり、なかなか新商品開発に着手できないんですよ。委託加工については業務用はもちろん、個人の漁師さんが自宅で楽しむ為に、口コミでウワサを聞いて依頼してくるケースも多いんです。生産者によって海苔はそれぞれ特徴があるので、加工時にはやはり見極めと判断力が大きく必要になってきます。

Q・まさに職人の世界!ここ数年、農業や漁業など第一次産業が脚光を浴び、後継者不足と叫ばれる中でも若手の志願者が増えていますね。
A・いわゆる農業・漁業ブームですよね。でも、義父と義母を見ていると、そんな甘い世界ではないということは重々感じています。海苔の生産高全国トップの佐賀県で、直販を始めた義父の覚悟は並大抵のものではありませんでしたし、機械導入など初期投資を思い切って行って、軌道に乗せるまでの試行錯誤もそばで見てきました。そのプロセスを経て現在、パイオニアとして第6次産業としてのビジネスモデルを打ち立てましたが、まだまだ今後の課題はたくさんあります。うちにも漁師や加工をやりたいという若者がたまに訪ねてきますが、よほどの覚悟ややる気がないと難しいと思います。

Q・バブル期、ギフトといえば缶に入った高級海苔でした。そんな光景もなくなって久しいですが、現在「有明の風」さんでは「ギフト商品」が大変人気だそうですね。
A・ネット時代も手伝って、本当に美味しい海苔を探している全国の方から、また海外からも注文がどんどん増えています。他にも、東京や福岡の有名レストランやホテルでもうちの商品を使っていただいています。

Q・直販ならではの良さですよね!どんどん可能性が拡がっていっています。
A・義父はライバルも出てきてほしいと常々言っています。それが佐賀の海苔業界の底上げに繋がればといいという考えなんですね。もちろん生活がかかっているので、収穫した海苔をすべて加工直販しているわけではなく、「有明の風」の商品として販売する分は全体の収穫量の約15%。現在、大量生産を行う生産者の数も少なくありません。海苔は水の中に長時間つけることで伸ばすことができるので大量に出荷できるんです。その代わり旨みや柔らかさ、そして味、栄養分はなくなります。より多くの人に本当の海苔の美味しさを手軽に知ってほしいという想いから直販を始めましたが、私たちだけでは力が足りません。

Q・佐賀海苔の本当の美味しさ、価値をより多くの人に知ってもらうためには香代子さんのような若手に期待がかかってきますね。
A・義父や義母の周りには活動を応援、サポートしてくれる方々がいっぱい集まって来るんですよ。県や市や各自治体ともお付き合いが増え、最近は、子どもの病気について研究するNPO法人の為に、寄附付き商品を販売するなど新しい試みも始めています。自社ホームページも新しくしたばかりですし、一人前の加工職人になること以外にもやることはたくさんあります!

Q・香代子さんもやっぱり熱くてステキですね!今後の夢や想いを聞かせてください。
A・ビタミンやミネラルなど栄養分に溢れた海苔を、健康食品としてPRしていきたいと思っています。その為には成分調査を行って、裏付けデータをとる為に動いていくつもりです。新商品開発はもちろん、メディアにもどんどん露出して海苔の素晴らしさを広くアピールしていきたいですね。その為には、まず体験。やはり、船に乗って海に出ないとですね…結構勇気が要るんですけどね(笑)。


加工場1加工場2
加工場1加工場2
一枚一枚、焼き加減は色味を見て品質チェック。加工職人がどの工程にも携われるよう、加工はローテーションを組んであたっている。



加工場3加工場4
(左)一瞬で焼き上がり、塩や油を乗せることができる機械。温度や湿度により設定を誤ると大量なロスを出してしまうので、機械による加工も慎重に行わねばならない。(右)商品用にタテ21cm・ヨコ19cmの海苔を8つ切りにカット。



加工場5加工場6
(左)加工が終わったら丁寧にパック詰め。商品は隣接の直販店舗、佐賀県内の産直市場や道の駅などに並べられる。(右)東島さん夫妻と(右から2人)とパートさん3名。コチラに香代子さんが加わり、新体制でスタート。


>> 有明の風さんの商品はこちらからご購入いただけます。

  


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