店主訪問記

2021年02月15日

「子どもの本屋 ピピン」さん

「楽しかった」が一番!
絵本がつなぐ親と子の絆と思い出

 今年初めての『店主訪問記』は、パソコンやスマホから飛び出して、佐賀の街中で活躍している“店主”にインタビューしてきました。オンラインショッピングモール『さがファン』の店主・会員さまではありませんが、今後、『佐賀クチコミグルメ』と同じく、佐賀県内で活躍中の“店主”に積極的にお話しを聞き、佐賀の魅力をお伝えするとともに、新たなる“さがファン”を作っていきたいと思っています!
 第一弾は、子どもたちとその親たちに寄り添い、絵本・児童書を専門に、佐賀市中心街にて有志5人で展開している『特定非営利活動法人 子どもの本屋 ピピン』さんです。

本が子どもをはぐくんでくれる。でも本選びはどうしたら…?

Q・現在、大手の本屋がほとんどの中、絵本・児童書専門店の存在は珍しいですよね。『ピピン』さんは何がきっかけで誕生したのですか?
A・佐賀ではピピン1店だと思います。ピピンは2003年に開店して今年で18年目になります。
ピピンが誕生したきっかけは、佐賀市高木瀬にあった児童書専門店『こすもす』の閉店です。『こすもす』は佐賀で20数年続いた児童書専門店で、店主の原田明夫さんから本のことや図書館のことをたくさん教わりました。その原田さんが体調を崩し、『こすもす』を閉店することになりました。私たちメンバーは常連客で、その時は、私たちの子どもは、高校生や大学生になっていたのですが、子どもが小さい頃から原田さんおすすめの絵本や児童書を一緒に読んで、とても楽しんできました。それで、今度は私たちが、原田さんのように、絵本や児童書を一緒に読む楽しさを伝える子育ての応援団になりたいと思ったのです。それに、その頃は、中心部の本屋が次々と閉店し、絵本や児童書が思うように買うことができなくなったことも大きかったと思います。

主婦5人の熱意と格闘の末に生まれた、唯一無二の空間

Q・思い切りましたね?その頃皆さんは何をされていたのですか?
A・その時は、子ども劇場の活動や、全員が市立図書館のサポーター「図書館を友とする会・さが」のメンバーで、私は、地域の子どもたちに公民館で絵本や児童書を貸し出す子ども文庫を主宰していました。そして、私を含めメンバー5人の内3人が仕事を持っていましたので、土日に集まって話し合ったり、作業したりしていました。開店も土日を中心に週3日か4日でした。
お店は、最初、佐賀北高校北側の農業倉庫をとても安い家賃で借りて始めました。
本は、『こすもす』さんの在庫をすべて、格安で引き取ったものです。本棚もいただきました。そこで本屋の体裁はできたのですが、『こすもす』さんが仕入先との契約を解約した後で、新たに契約をするためには何百万もの敷金が必要で、用意することができませんでした。最初は、福岡の春日にある『エルマー』さんにお世話になったり、仕入先を教えてもらったりして、何とか乗り切ることがきました。今は仕入先もいくつか確保できましたが、すべて本は買取です。

Q・そして、2006年現在地(呉服元町)に移転されたのですね。この場所の決め手はなんだったのですか?
A・店を開店して2年目に、家主さんの都合で前の店を出ていかなくてはならなくなりました。これからどうしようかと思っていた時に、佐賀市立図書館の職員さんから、佐賀市の商業振興課に相談してみたらとアドバイスをいただきました。商業振興課さんは、シャッター街となっていた白山商店街を活性化するために空き店舗対策をしていたところで、今の店舗を紹介してくれたのです。あまり資金がなかったのですが、家主さんがとてもいい方で、家賃も安く貸してくださいました。お店は以前化粧品店だった店を改装しました。改装にあたっても低予算だったのですが、市役所の職員さんが手伝ってくれて、その方たちが大工さん並みの道具や技術をお持ちで、仕事が終わってから夜遅くまで1カ月ほどかけて、改装出来ました。店内の木材は当時、富士町にあった森林組合から、杉材を安く分けてもらって、床、壁、本棚もすべてその材料で作りました。大工仕事は初めてだったのですが、とても楽しかったです。
この場所に移ってよかったなと思ったことは、街なかということもあり、イベントなどほかのお店さんと一緒にいろいろできることですね。そして、子どもの本屋がここにあるんだと、通りがかりの人たちに知ってもらう機会が増えたこともうれしかったです。この場所を紹介してくれた方たちに感謝しています。

開く、めくる、想像する、閉じる―時をともにする喜び

Q・泉さんは子育てに本が必要だと強く思っていらっしゃいますよね
A・今はたくさんの絵本と児童書が出版されていて、とても幸せだなと思います。私の子どもの頃は、田舎でしたし、近くに本屋さんもなかったので、保育園でもらったキンダーブックを宝物のように読んでいました。私の子どもたちが小さい頃は、毎晩寝る前に絵本や児童書を読みました。よく聞いてくれましたし、何より私が読みたくて。その時間がとても楽しかったです。
昼間にものすごく叱った時には、帳消しにしてくれるような時間で…。一緒に笑って…。今でも絵本を見て、子どもたちと一緒に読んだ時の場面まで思い出す事があります。もう何十年も前のことなのに、幸せな気持ちになります。子どもたちもきっと、その幸せな時間は覚えていてくれていると思います。

Q・『ピピン』さんでは、読み聞かせやおはなし会、わらべうたを楽しみ、すばなしを聞く会、布絵本づくりなど、さまざまなイベントを開催されていますね。
A・私たちは、特定非営利活動法人(NPO)として、本屋を営むだけでなく、子どもを取り巻く読書環境の整備と普及、子どもの本にかかわる人材の育成、子育て中の大人の応援などの役目も担っていきたいと考えていますので、それに沿ってイベントを行っています。そして、絵本作家さんに会ったり、すばなしを聞いたり、講師を招いて勉強会に参加することは、私たちの楽しみでもあり、活力にもなっていると思います。そのほかにも、『こすもす』の原田さんが毎月届けてくれたように、お子様の年齢やお好みに合わせたブックメニューを私たちがつくり、定期的にお届けする「ブッククラブ」も行っています。

Q・『ピピン』からのメッセージをお願いします。
A・『ピピン』には、今3000冊程の本があります。5人がそれぞれリサーチして仕入れています。5人それぞれの好みも違うのでいろんな本が集められていると思います。
絵本や児童書は、子どもはもちろんですが、大人までも、癒してくれます。皆さんが、いい絵本や児童書との出合いができますようにといつも思っています。ぜひ、どうぞお気軽にお立ち寄りください。

【DATA】
特定非営利活動法人 子どもの本屋ピピン
■住所:〒840-0824 佐賀市呉服元町7-13
■TEL/FAX:0952-27-8846
■営業時間 10:00~17:00(平日)、12:00~17:00(日祝日)
■定休日 火曜・金曜
■駐車場 近隣にコインパーキングあり

公式HP:http://www.bunbun.ne.jp/~pippin/
Email(お問合せ):pipin@po.bunbun.ne.jp

ピピンピピン
ピピンピピン
昨今、若手経営者を主に盛り上がりを見せている『佐賀・白山商店街』の入り口にたたずむ『子どもの本屋 ピピン』。木の温もりがホッとしたひと時を演出してくれる

ピピンピピン
ピピンピピン
『子どもの本屋 ピピン』には、ロングセラーから新書まで、絵本・児童書が約3000冊並んでいる。店内中央には、親子ともにゆっくり本を読むスペースがあり、思いおもいに本選びができる

ピピンピピン
ピピンピピン
北九州市出身の布絵本作家・江藤直子さんによる、『乳幼児のための布絵本づくり』のワークショップは大好評!ワークショップに参加できずとも、お母さん手作りのためのキットも販売中(3,700円~)

ピピンピピン
ピピンピピン
布絵本は年に一度、新作を発表。不器用でも大丈夫。お母さんの手作りということが重要で、子どもたちにとっては世界でたった一冊の大切な本になる。布絵本にはチャックがついていたり、ポップアップ仕立てになっていたり、工夫がたくさん!

ピピンピピン
佐賀中心街、『656広場』のすぐそばにある『子どもの本屋 ピピン』。隣接する『佐賀・白山商店街』は、歩行者天国になっていて、子どもたちが自由に遊べるスペースになっている

取材:森泉敦子

  


Posted by さがファンショッピング  at 14:29Comments(0)子どもの本屋 ピピン