2017年03月31日
「菓子処 村岡屋」武本 有喜浩さん
(株)村岡屋
営業部店舗課課長
兼 北部グループ担当
武本 有喜浩さん
銘菓にはストーリーがある
さが錦、第二章の幕開け
シュガーロードの地、佐賀の菓子処を代表する『村岡屋』さん。「お菓子は人と人のコミュニケーション」をモットーにオリジナリティあふれる和洋、季節の菓子を人々に提案し続けてきた。「ほとめき(おもてなし)の心」、「職人の技」、「地元の材料」、この3本柱のもとに生まれた結晶が、ご存知『九州銘菓 さが錦』。国際食品コンクール「モンドセレクション」では3年連続金賞受賞、4年連続最高金賞を受賞した、伝統の織物「佐賀錦」をイメージした唯一無二の創作菓子だ。今年で46周年を迎える銘菓の抹茶味『お抹茶さが錦』が4月1日、新登場!期待とともに広報担当の武本さんに話を伺った。
Q・ずっと『さがファン』のインタビューでは『さが錦』に並ぶ目玉商品開発の話題が出ていましたが、ついに文字通り"第2のさが錦"が登場しましたね。
A・実は満を持して、なんですよ。『お抹茶さが錦』においては6年ほど前に原型はできあがっていたんです。しかしその数年前、2006年5月に小豆と栗、両方を生地に詰めた個別包装タイプが発売され、『さが錦』の後継となる新商品を出すのは時期尚早だという話に落ち着きました。しかし時代の流れに伴い、『さが錦』の棹の売上も含め、全体の菓子売上の落ち込みが続き、今年、全社一丸となって販売にいたったんです。
Q・眠っていた『お抹茶さが錦』がついに世に…(試食)、見た目も鮮やかでお茶の香りがふんわり!小豆もゴロゴロ入っていて、味もしっかりしていますね!
A・この緑は天然の八女茶による色なんですよ。佐賀なので嬉野茶を使いたかったのですが、残念ながら嬉野では抹茶を生産していないんです。抹茶と小豆の相性が良く、よりお茶の風味を生かすため、オリジナルの『さが錦』と違って栗は入れていません。また、バウムクーヘンでサンドした和菓子の半生生地「浮島」は、オリジナルと配分をほぼ変えず、卵、砂糖、小麦粉、小豆、そして抹茶に山芋などを混ぜてしっとりと焼き上げています。
Q・オリジナルと比べて、あまり違和感がないのもポイントでしょうか。
A・そうなんです。もともと『お抹茶さが錦』は数ある商品企画の一部だったんですよ。最初は『さが錦』をベースとした、まったく新しい創作菓子としてチョコチップを入れた試作品もつくっていました。しかし、商品開発に約4年間かけたオリジナルの『さが錦』の完成度が高いため、ちょっとでもエッセンスが入ったものは商品として上手く仕上がらなかったんです。そこで、完全に後継品としての商品づくりにスイッチしました。和菓子の「浮島」を洋菓子のバウムクーヘンでサンドし、生地の貼り合わせのために隠し味のチョコレートを使用する。和洋折衷を超えた、完全オリジナルの比べようのない商品が『さが錦』です。『お抹茶さが錦』はあくまでもオリジナルの弟分のような存在ですね。
Q・オリジナルの存在感を引き立たせる存在としても一役買いそうですね。
A・近年、抹茶ブームというのもありますし、相乗効果も期待しています。実際、3月のお彼岸セールの4日間、1500円以上お買い上げのお客様に『お抹茶さが錦』を2個プレゼントしたんですよ。7000人分配ったのですが、お客様の評判も上々でした。今回は大々的に宣伝はしていないのですが、間違いなく美味しいですので、口コミで広がっていく自信はあります。またお彼岸セールでは前年度の売上に比べてアップし、お彼岸のお供えにと菓子をご購入されるお客様にたくさんお会いすることができました。
Q・まさにお菓子は人と人とのコミュニケーション、ですね。
A・その原点は大切にしたいですね。お菓子をきっかけに話題が広がって行けば、と思っています。『村岡屋』の菓子は焼き菓子の『徐福さん』をはじめ、『鍋島さま』、『鍋島本丸』など、佐賀に伝わる歴史や伝説を名前に込めた商品が多いんですよ。徐福は秦の始皇帝の命を受け、不老不死の霊薬を求めて日本へ上陸したという人物で、佐賀にも多くの伝説が残っています。中国にも徐福というスナック菓子があるらしく、先日上海のテレビ局が『徐福さん』を取材に来たんですよ。『さが錦』もそうですが、名菓はタイミングと場所、そして名前があって生まれるものだと思っています。名菓には背景にストーリーがあるんです。
Q・『さが錦』が肥前鹿島藩大名・鍋島家に伝わる伝統織物「佐賀錦」の美しさにあらためてスポットを当てたとも言えますね。今後、抹茶に続く弟分が出る予定はありますか。
A・実はブドウ味の商品もあったんですよ。干しブドウを「浮島」に加えたものですが、当時、日本ではあまりレーズン菓子はなじみがなく、残念ながら1991年に廃盤になりました。昔は日本刀で棹を1本1本切っていたのですが、機械化して超音波カッターを導入してから、レーズンがきれいにカットできなかったという理由もあります。次の商品が出るとしたら、佐賀の特産品を使ったものになるのは間違いないですね。しかし、イチゴなど半生の素材を同じく半生の「浮島」に加えるのは難しく、色合いの課題もあります。個人的にはブルーベリーがあったらいいなと思っていますが。いずれにせよ、今後、菓子づくりにも冒険心がもっと必要になってくると思っています。期待していてください!
鍋島にある本社と隣接工場。工場では1階が羊羹等の和菓子、2階が焼き菓子、洋菓子や『さが錦』を製造している
近年人気の個別包装だが、菓子を包むフィルムは各々に合った高級素材を使用。『お抹茶さが錦』は空気に触れて美しいグリーンが茶色く変色しないよう、紫外線を通さないアルミ蒸着フィルムを使っている
工場では一般客に向け、工場見学を随時実施している。清潔な状態にしないと内部に入ることはできない
温度や湿度に左右される、デリケートなお菓子づくり。コンピューターでの厳しい管理のもと、ブレのない味ができあがる
工場内で一番大きな部屋は製餡部屋。精密さが必要とされるもなかの製造は少人数で行い、量の多い『丸ぼうろ』は流れ作業だ
『さが錦』の特徴である、卵・小麦粉・山芋などを加えて蒸した生地「浮島」は均一の厚さにプレスされ、トンネル窯でしっとりと焼き上げる。「浮島」をサンドするバウムクーヘンは一層一層手作業で塗り重ね、10数回に分けて焼いていく
5㎜の厚さにバウムクーヘンをスライスしていくさまはまさに職人芸。帯状のバウムを並べ一枚の板のように仕上げ、チョコレートを塗った「浮島」とピッタリ一体化させる
カットは超音波カッターと手作業、両方で行われる。実店舗では切れ端を詰めた「さが錦お得用パック」が人気だ。職人技を楽しめる工場見学。興味がある方は申し込んでみてはいかがだろう?
取材:森泉敦子
「菓子処 村岡屋」 山口 祐司さん
「菓子処 村岡屋」山口 祐司さん
「菓子処 村岡屋」山口 祐司さん
「菓子処 村岡屋」笹原 秀孝さん
「菓子処 村岡屋」横尾 麻紀さん・大園 裕子さん