店主訪問記

2013年03月30日

「前田畜産 南波多ミート」前田 久務さん

「前田畜産 南波多ミート」前田 久務さん
(有)前田畜産
南波多ミート

代表取締役社長
前田 久務さん

いつもの肉をいつもの価格で提供する-
“お客様一番”を守り続けることが信念

 ブームに左右されないグルメ。それこそが佐賀を代表する特産品の肉だ。中でも佐賀県内で伊万里産の肉は全国でもトップクラスの品質を誇る。ここでちょっとおさらいしよう。佐賀県産和牛の中で「佐賀牛」はJAさがのブランド牛。伊万里牛は総体的な呼び名である。元々、肥育農家が多い南波多地区は最高品質の肉の発信地。伊万里牛は肉の最高級ランク・A5が占める割合が最も高く、多くの「佐賀牛」を世に送り出している。佐賀産和牛の頂点に君臨する伊万里牛を驚くべき価格で提供し続ける「前田畜産」さん。8年前の「さがファン」オープン時、そして5年前…3回目の訪問。改めて魅力を探りに伺った。


Q・「さがファン」の記念すべき第一回目のインタビューが「前田畜産」さんでした。当時、前田さんは専務、そして最近社長にご就任されたそうですね。
A・もう8年前になるんですね。あれから本当に何も変わってないんです。相変わらず、週末には県内外からお客様が行列を成して直販店においでいただきますし、少数精鋭のスタッフで頑張っています。父である先代社長は私と違って、あまり現場に顔を出さないタイプでしたので、自分自身が社長になっても変わらず、それよりも業務が増えて大変なんですよ(笑)。


Q・変わってないというところが一番すごいなあと思います。この不景気の中、継続こそ何よりも信頼の証ですよね。
A・それでもやはり、ここ数年の不景気はダメージがありましたよ。伊万里牛というと高級品ですし、贅沢品は家庭の食卓からまず一番先に消えていきますからね。「さがファン」ではギフトを中心に扱っていますが、お店では肉じゃがなど家庭料理で気軽に食べていただけるお肉を置いています。これが福岡の高級スーパーだと2倍の値段で売っていますからね。お客様は、「一度、前田さんのお肉を食べたらもう他のお肉が食べられない」という方がほとんど。特にお子様の意見は正直で、お肉を変えるとすぐにわかっちゃうそうなんです(笑)。ギフトと普段用を分けながらPRしているところも8年前と変わりませんよ。


Q・仕入れから加工、販売まで一貫体制が前田さんのすごいところで、何よりもの特徴です。このシステムだからお客様にリーズナブルな金額で高級肉の提供が可能なんですね。
A・この一貫体制は、佐賀県内でも私どものところだけです。代々、前田家は肥育農家ですが、兄が5代目を継いで現在お店近くの牧場で牛たちを育てています。先代の父は牧場と直販店を兼任していた形になりますね。私自身は農業高校の時に経験した牛の解体実習に興味を持ち、大阪の肉屋に就職、解体と営業の仕事を経て伊万里に戻ってきたんです。ですので、仕入れはもちろん、卸屋さんや、福岡のレストランさんなどへの営業も私の仕事。お歳暮時期の多忙期間には工場に入り、解体の仕事も行っています。


Q・それに加え、社長業も!毎日お忙しいですね。仕入れから販売までの流れを教えてください。
A・佐賀の多久、福岡の二日市、福岡市と3カ所の市場に1週間2回出向きます。仕入れにはとても気を遣いますね。生産者の牛の育て方によって全然味が違いますから。肉の色、脂肪の入り具合を表す霜の刺し具合を見れば、どんな育てられ方をしてきたのかがわかります。生産者と一体となって、良い育ち方をした牛を見極めないといけません。枝肉を丸ごと仕入れるのですが、一ヶ月に50頭を目安に3カ所を回り、良い肉を仕入れています。


Q・お兄さんが育てた前田牧場の牛を仕入れることもあるんですか?
A・もちろんありますよ。佐賀・福岡の市場の数は少ないですから、情報交換はとても大事です。仕入れてきた枝肉は、直販店隣接の工場にある大型冷蔵庫2つに保管します。1つの冷蔵庫に枝肉が20本入りますので、随時40本は保管していますね。冷蔵庫は1つで約20畳の大きさなんですよ。そこから解体し、加工、販売につなげます。


Q・すごい大きな冷蔵庫ですね。電気が止まったら命取りですね。
A・一度、大雨の時、電気が止まったことがあったんですよ。その時は配送に使う冷蔵トラックに枝肉を運び、一時の難をしのぎました。冷蔵技術が出てきたのは約40年前。当時は仕入れてすぐにさばくのが常識でした。この時代、大型冷蔵庫の果たす役割は大きいですね。枝肉の解体はまさに体力勝負。今、若手の4人が1日3頭ペースで頑張っています。お歳暮時期は1日5頭ペース。それから、販売用に小さくカットしたり、パッケージなどの作業をする加工をするスタッフが2人。この作業は肉屋さんやスーパーで見ることができますよね。それから3人のスタッフが直販店で販売を行っています。


Q・ケースに並ぶお肉や「さがファン」で届けられるお肉は仕入れからどのぐらいの時間がかかっているんですか?
A・肉においては新鮮が良しとされるわけではないんです。屠殺したばかりの肉は固く変色が速いんですね。まず冷蔵庫で2週間ほど寝かせます。じっくりと熟成させることで細胞がくずれ、肉が柔らかくなるんですよ。良く言いますが、腐れかけが美味しいということに似ていますかね。味が落ちつき、一番良い状態が2週間後というわけなんです。魚の刺身とはまったく正反対となりますね。


Q・それは初めて知りました!肉の性質を知り尽くし、仕入れから解体、加工を通して、お客様に提供…まさに肉のプロフェッショナルですね。
A・信念があるとすれば“お客様一番”ということです。もちろん時代、状況の変化で「いつもの肉をいつもの価格で提供する」ということが難しいこともあります。でも、そこでランクを下げたり、値段を上げたりすると、お客様は必ず逃げていかれます。まず、お客様がいらっしゃり、肉と自分たちがいる、そういう位置づけを変えないように心がけています。安易な変化は継続できないですし、信頼も損ないます。キツい時もありますが儲けというよりも、まずお客様に肉を食べてもらわないことには始まらない。“お客様一番”の図式を絶対に崩さず、変わらずやっていくことがモットーです。


Q・なるほど。そこが変わらないことの一番の魅力ということが良くわかりました。今後、何か新しい展開をするというよりも、継続を一番に考えていらっしゃるんですね。
A・はい。5年前に妻がインタビューを受けた時は、お客様がより快適にお買いものができるよう、直販店と工場を改装した後だったと思います。それからハード面も変わっていません。ただソフト面が…。正直、今一番望んでいるのはスタッフなんですよ。解体の作業はとても大変であまり世間に知られてないので、採用が難しいんです。今まで、イメージが違うと辞めて行った若手もいました。私自身は高校時代、解体が面白くてこの世界に入ったようなもの。より速く、よりキレイに、スポーツ感覚で解体技術をモノにしていってくれるようなスタッフを大募集中です。スタッフが増えたら、伊万里牛の良さをもっと多くの人にPRできると思っています!今度インタビューを受ける時には、スタッフのことをもっと語れるようになっていれば、と願っています(笑)。


前田畜産 南波多ミート 前田畜産 南波多ミート
大自然の中に建つ、「前田畜産 南波多ミート」。解体・加工工場を隣接した直販店舗には週末となると県内外から車の行列が押し寄せる(水曜日定休)。


前田畜産 南波多ミート 前田畜産 南波多ミート
前田畜産 南波多ミート
伊万里市・南波多地区は最高品質の佐賀産和牛を生み出している県内有数の地域。広大な土地で日々、生産者と一体となりのびのびと育つ牛たち。


前田畜産 南波多ミート 前田畜産 南波多ミート
直販店に隣接された工場では、肉の解体から商品づくりまで行っている。この見事な紅色に美しい乳白色のサシには感動!!


伊万里牛 伊万里牛
伊万里牛 伊万里牛
伊万里牛
さがファン」ではステーキなどギフト用をメインに紹介している。立派な杉の化粧箱に彩られた逸品に感動が感動を呼び、全国からリピーターの注文が鳴り止まない。佐賀県近郊にお住まいの方は、細切れ肉やスジなど普段使いのお肉を買いに、一度出かけてみては?


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Posted by さがファンショッピング  at 16:59 │Comments(0)伊万里牛 前田畜産

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